実は、マネージャーが私に問いかけたことは、すべて問題解決の基本プロセス、基本原則、言い換えれば仕事の原理原則だったのです。

 自分がいくらこれが問題だと思っていても、クライアントにとって本当にプラスになるものでなければ意味がありません。

 私たちは、つい目の前のわかりやすい事象をつかまえて、そこを何とかしようと考えてしまいがちです。自動車販売が低下しているなら、販売戦略を見直すべきだと考えるわけです。

 しかし、自動車販売の低下の原因がその自動車そのものの商品力がないからだとしたら、販売戦略を見直してもムダになります。マネージャーが教えてくれたのは

「クライアントにとって、そもそもどうなることがいいことなの?」

 という、より根源的で本質的なことを問いながら仕事をしなさいということでした。

「自動車メーカーの成長戦略をどうするか?」というお題に対し、そのための販売戦略につながる資料がポイントなのでは? と思っていた私にはちょっと衝撃でした。

「クライアントにとって、どうなることがいいことなの?」というような、筋のいい問いができると、そこから思ってもみない突破口が開けます。この場合なら、自動車メーカーに対して自動車というハードだけでなく、自動車があることで広がる体験の豊かさなどソフト面の良さも打ち出していくといった提案もできるでしょう。

 そうした発想は、ただ漠然と目の前のデータを見ていただけでは生まれてきません。

「どうなることがいいことなの?」というような問いをすることで突破口が開き、そこから他の人とは違った仕事が生まれるのです。その積み重ねができるかできないかによって皆さんの成果や成長も大きく違ってくるのです。