「今回は安全志向でも挑戦志向でもなく、自分の学力に応じたところを手堅く受けていこうという傾向が見られました。国公立大でも私立大でも、下位レベルの大学は志願者を減らし、中堅レベル以上は人気を保っていたといえるでしょう」

地区別の志願状況の推移(国公立大学)
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人気を集めたのは就職に直結する学部

 また、コロナ禍は人々から自由な移動を奪ったが、これは大学入試にも影響していた。

「都市部がいいとか地方がいいとかではなく、とにかく自分の居住地に近い大学を選ぶ動向が見られました。国公立大では、北海道、東北、北関東の大学の志願者数が減っていましたが、これは従来あった首都圏からの受験生流入が滞ったことが要因でしょう。私立大は全体的に志願者数が著しく減ったのですが、これまでなら遠方から受験生を集めていた首都圏、東海、近畿の大学も例外なく減りました」

地区別の志願状況の推移(私立大学)地区別の志願状況の推移(私立大学) 拡大画像表示

 コロナ禍のなか、人気が上がった学部系統はあったのか。

「比較的人気を保ったのは、医学、保健衛生などのメディカル系と理工系。連日コロナ関係の報道がされるなか、医師の活躍やワクチンや治療薬の開発などに興味をもった学生が多かったのかもしれません。また、主要産業だった観光業界への就職が厳しくなった地方では、地元に残って働く手段として、メディカル系を選んだ人もいたでしょう」

学部学科系統別の志願状況の推移(国公立大学)学部学科系統別の志願状況の推移(国公立大学) 拡大画像表示

 反対に、人気が下がった学部系統は何だったのか。

「コロナ禍で海外渡航が難しくなり航空・旅行業界が大打撃を受けた影響で、外国語と国際関係は、顕著に志願者が減りました。ですが私は、これらの学部は案外狙い目なのかもしれないと考えます。25年には大阪・関西万博が、26年には愛知・名古屋アジア競技大会が予定されていて、今の高校生が社会に出るころには外国人旅行者が戻っているはずです。また、オンラインで世界と手軽につながれる現在、現地には行けずとも国際交流の機会は増え、語学力や異文化理解に優れた人材は重宝されるでしょう」

学部学科系統別の志願状況の推移(私立大学)学部学科系統別の志願状況の推移(私立大学) 拡大画像表示

 21年から始まった大学入学共通テストについて、石原さんはこう評価する。

「全体的によくできていましたが、初年度だから様子見で『サービス問題』だったともいえます。1979年に共通一次試験が導入されたときも、90年に大学入試センター試験がスタートしたときも、初年度は得点しやすく、2年目、3年目は平均点が下がりました。2022年度は問題が難しくなることが予想されますので、基礎的な学力をしっかりつけて臨みたいですね」