岸田首相に「新しい資本主義」を
構想できるように思えない

 一部で、この間の株価下げは「岸田ショック」などと呼ばれた。

 この下げには、中国の不動産問題、米国政府の債務上限問題など他の要因も影響した。ただ、「金融所得課税見直しを掲げる岸田氏」「河野太郎氏ほど国民の人気がないので、選挙の負け幅を拡大するかもしれない岸田氏」といった、岸田氏個人を理由とする投資家の失望感があったといえそうだ。

 不思議でもあり気になるのは、見直しの先送りよりも、そもそも岸田氏がなぜ総裁選の政策の一つとして金融所得課税の見直しを取り上げたのかということだ。「1億円の壁」「新しい資本主義」といった言葉と共に語ったのだが、これは深く考えていない単なる思いつきだったのか。政治家の言葉が大げさなのはよくあることだが、こんな人物に「新しい資本主義」を構想できるようには思えない。

「人の話を聞くことが得意だ」という触れ込みの岸田氏だが、「自分で考えて結論を出すことは苦手」なのかもしれない。前途多難を思わせる。

金融所得課税の税率引き上げが
ダメな「二つの理由」

 金融所得課税の税率引き上げがダメな理由は二つある。

 第一に、投資による収益獲得を「罰する」効果があることだ。高額所得者、より正確には多額の資産を保有する主体に費用(普通は税金)をより多く負担してもらって、再分配を広く行う原資にすることは方向性として悪くない。個別の税金を作るときに反対論は出ることがあろうが、総論は「再分配に賛成」が多いだろう。

 しかし、投資による収益を課税対象に狙うのはいかがなものか。