デート時の靴下選びから
プロポーズのアドバイスまで

 naco-doでは、初回に90~120分のヒアリングをした後、隔月で1時間前後の定期面談を行う。現在naco-doのサポーターをしている石崎ゆりこ氏は「初回が最も大切」と話す。

「1回目の面談は、会員さまの恋愛経験などを含めていろいろなお話をします。その間に相手の緊張がほぐれていき、並行して行うチャットのアドバイスも受け入れてもらえるようになります。何より、オンライン面談なら表情や話し方や、雰囲気が目に見えるので、チャットのみで20通以上やりとりをしてもわからなかった一面も、短時間で見えてきますね」

 また、面談は自宅で行うため、相手の部屋の雰囲気や趣味がわかるというメリットも。自室というパーソナルな空間での面談は、多くの情報が得られるという。

「会員さまによっては、対面でお見合いに行くときにはいていく靴下の色や、カバンを持っていくか否か、マスクはいつ外せばいいのかなど、事細かに相談を受けるケースもあります。ある会員さまの場合は、プロポーズのタイミングや、指輪の相談も乗りましたね。私とそれほど年齢が離れていない男性でしたが、プロポーズOKのご報告をいただいたときは、母親のような気持ちで喜んでしまいました。特に自分に自信がない方は、チャットよりも顔を見ながらアドバイスするほうが受け入れてもらいやすい印象です」

 同サービスは、プロポーズ後に親への挨拶まで済ませた時点でサポートが終了する。早くても半年、場合によっては1年以上関係が続くため、信頼関係は欠かせない要素になっているそう。

「面談だけで婚姻率が急激に上がったわけではありません。成婚率が20%前後に到達したタイミングで頭打ちになっていたので、2021年2月からは『日本NLP能力開発協会』で学んだコーチングの手法を取り入れました。アドバイスの伝え方を工夫してコミュニケーションをとるようになってから、段階的に婚姻率が40%まで上がってきた状況です」

 山田氏は、結婚相談所のサポートとして“オンライン面談”のメリットは感じつつも、人件費コスト面ではデメリットもあると語る。

「チャットが主流のオンライン結婚相談所は、サポーター1人当たり200人以上のユーザーを担当できますが、naco-doは面談に時間を割くので1人につき60~80人のサポートが限界。事業面ではコスト効率の悪さがネックになるので、ほかの結婚相談所がオンライン面談をはじめる可能性はあまり高くないです。当社では他社との差別化を図る意味でも、オンライン面談は継続する予定です。今後は気楽に続けられるオンラインの良さを伝えつつ、しっかり結婚につなげる実績づくりに力を入れていきたいです」

 結婚相談所はサポーターと相談者の二人三脚。その軸さえブレなければ、オンラインでも十分ゴールインが目指せるようだ。

 もちろん世の中には、対面でなければ成立しない接客業も多数存在する。しかし今回紹介した事例のように、一度立ち止まって視野を広げると、新たな接客方法が見えてくる業種もあるかもしれない。