1日8000歩、時に速歩で コロナの時代の健康術Photo:PIXTA

 新型コロナワクチンの接種が進み「新しい日常」も視野に入ってきた。ただし、ウイルスとの共存がしばらく続く以上、日々の健康管理が肝心だ。

 重症化リスク筆頭の「肥満」については食事管理と運動が特効薬。自粛中に体重が増えた方はウオーキングを始めたい。

 よく「1日1万歩」が健康維持・増進の目安とされるが、これは1960年代半ばの日本で世界初の「万歩計」が登場した際の販売戦略の名残。いわゆる科学的根拠があるわけではない。

 先日、若年成人と生活習慣と心臓病との関連を追跡調査している米「CARDIA」調査から、歩数と死亡率との関係が報告された。

 調査では38~50歳の男女2332人に加速度センサー付きの歩数計を7日間装着し、歩数を計測。その後11年間追跡調査を行った。

 1日の平均歩数を7000歩未満、7000~9999歩、1万歩以上で比較した結果、1日7000歩以上歩くことで全死亡率が50~70%低下することが示された。ところが、1万歩以上歩いても、追加の健康増進効果は認められなかったのだ。

 米国の報告を見るまでもなく、日本国内で2000年から継続している65歳以上を対象とした「中之条研究」からも同様の報告があがっている。

 同研究で示された健康歩行は、1日合計8000歩程度のなかで、20分以上「速歩」や「大股歩き」などの中強度の運動を取り入れる方法だ。若い人は中強度の運動としてジョギングやインターバルトレーニングを取り入れるといい。

 個別の病気予防に有効な歩数もわかっている。たとえば4000歩以上+速歩を5分以上でうつ病の予防に、5000歩+同7・5分以上になると認知症や脳・心血管疾患の予防に有効だ。気になる肥満や糖尿病、がんの発症予防には、1日8000~1万歩+20~30分以上の中強度運動が望ましい。無理をせず、休日を含む1週間のなかで調整するといいだろう。

 ウィズコロナの時代では、毎日の健康管理が文字通り「命を守る行動」になる。外出できる喜びを味わいつつ、歩きだしていこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)