奄美のカエルとマングース

 奄美大島には、絶滅危惧種のアマミハナサキガエル(以後カエル)がいます。この在来種のカエルは、1979年に人為的に導入された外来種のマングースの登場によって、生態系的にも窮地に追いやられてしまいました。その後、2000年から始まった環境省による駆除によって、ほとんどのマングースはいなくなりましたが、在来種へのダメージは甚大でした。こうした状況で、ピンチだったカエルの生態はどう変化したのか。国立環境研究所や東京農業大学の研究者が2019年に発表したところによると、なんとわずか数年の間に、カエルの逃避能力が劇的に向上していたのです。(発表記事はこちら

 もともと捕食者の少ない環境に生きている在来種は、外来種の天敵から逃げることを知りません。そうすると次々と食べられてしまいます。こうして奄美のカエルも絶滅に近づいてしまったのですが、そんな中でも積極的に逃避行動を取るタイプのカエルは、比較的生き残りやすかった。そうすると、すぐ逃げる性質が子孫に次々と遺伝することで、急速にカエルの逃避行動が進化していきました。つまり「ビビリなカエル」が生き残ったわけですね。

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 ここで面白いのは、マングースが導入された地域に近いところに生息していたカエルのほうが逃避行動は進化していて、遠い地域のカエルのほうが変化は少ないという状況が、マングースが駆除されてから数世代の年月がたった2019年にも、変わらずに続いていたことです。

 つまり、劇的な変化にさらされ、生き残りを模索せざるを得ない場所に生息する者の方が、逃げ足が進化していたんですね。この傾向は奄美のカエルだけでなく、あらゆる生物の変化と逃避行動に言える真理かもしれません。うむ……ここまで読むと何かを思い出さないでしょうか。