もう価格には意味がない?若者が「お金を払いたい」と思うものとは?【図1】入山章栄氏作成
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入山 簡略化した図で紹介します。経済学で言うと、上の【図1】に青線で描いた需要曲線(D)と、赤線で示した供給曲線(S)があります。縦軸が価格(P)で、横軸は数量(Q)。需要量と供給量が一致するところで市場均衡が決まります。

 ここで人は消費と需要をし、この一致したところの価格でモノが売買されるというのは、経済学の初歩で学ぶことも多いはずです。

 その時に「消費者余剰」といって、経済学では重要な余剰概念があります。余剰概念とは、直感的に言えば、「消費者が追加で得られる幸福度」のことと考えてください。図だと、水色で塗りつぶされた面積がそれに当たります。

 例えば需要が緑で示した点にあるとすると、価格は下の紫で示した点ですよね。一方で、この人は緑の点が示す価格までお金を払ってもいいと思っている。

尾原 それなのに、下の点の価格で買えてしまうのがこの斜線の部分なんですね。

入山 おっしゃる通りです。これはいわゆる「追加のハッピー度」なんですよね。水色で塗った面積全体が、消費者が得られている「追加のハッピー度」になる。それを経済学者は「消費者余剰」と呼んでいます。

 この消費者余剰を大きくするのが、すごく大事だという話がある。今、供給曲線は、下の【図2】のオレンジ色で示した線のように、右上がりではなく、フラットになっているんですよ。

もう価格には意味がない?若者が「お金を払いたい」と思うものとは?【図2】入山章栄氏作成
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尾原 非常に安くて良いモノが作れてしまうからですね。

入山 そうです。いわゆる「限界費用ゼロ社会」になっているのです(注:限界費用とは、商品をひとつ生産する時に発生する追加費用のこと)。やや専門的になりますが、経済学では、限界費用=供給曲線となります。昨今のITサービスは、一度製品を作れば、同じものをもう一度作るときにかかる追加費用がほとんどないですよね。「限界的に追加でかかる費用」がないので、限界費用が上昇しないんです。すなわち、供給曲線が横にフラットになる。

尾原 例えば映画だと、一度作ってしまえばストリーミングでたくさんの人に見せられますもんね。

入山 そうです。1回Netflixで映画を作ったら流し放題なので、「限界費用ゼロ社会」は経済学的に言うと、供給曲線が横にフラットになることなのです。

 ということは、逆に言えば、以下の【図3】でピンク色で塗りつぶしたように、消費者余剰が大きくなるわけです。

もう価格には意味がない?若者が「お金を払いたい」と思うものとは?【図3】入山章栄氏作成
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尾原 消費者余剰がめちゃくちゃ大きい社会になってくると。

入山 はい。実は今、恐ろしく消費者余剰すなわち「追加のハッピー度」が大きい社会に向かっています。

 これは僕が思いつきで言っているわけではなくて、経済学者が真剣に議論をしているんですよ。