当初、緊急支援事業への申請は21年3月末までの予定だったが、感染拡大によって病床の逼迫度が増したため9月末まで延長された。

 こうした国直轄の補助金のほかにも、COVID-19の感染拡大に対応するために、通常の医療費である「診療報酬」にも臨時的な加算や特例措置が繰り返されてきた。

コロナ病床を確保するために
繰り返されてきた診療報酬の臨時措置

 診療報酬とは、医療費の公定価格のことだ。その基本的な仕組みをまず説明しておこう。日本では皆保険制度が整備され、病院や診療所で受ける医療のほとんどに健康保険が適用されている。この健康保険を使って受ける医療の価格を診療報酬という。問診や処置、投薬、手術、化学治療など、一つ一つの診療行為の全てに、国が決めた価格が付けられている。

 この価格は、国の医療政策、物価や賃金水準、消費税率の改定などを考慮しながら、原則的に2年に1回改定され、改定年度前の3月に公表される。それぞれの価格は点数で表示されており、20年度は、初診料288点、再診料73点、オンライン診療料71点、処方せん料68点などと決まっていた。

 そして、治療のために行われた処置や検査、投薬など、一つ一つの診療行為を積み上げ、その点数の合計に10円を掛けたものが実際の医療費になる。

 たとえば、診療報酬の合計が1000点なら、【1000点×10円=1万円】で、医療費の合計は1万円。患者は、年齢や所得に応じて、このうちの1~3割を、医療機関の窓口で自己負担する。70歳未満で3割負担の人は、窓口では3000円を支払うというのが通常の流れだ。

 これが、コロナ禍対応のためにどのように変わったのか。前述したように、診療報酬の見直しは原則的に2年に1回だが、COVID-19の感染拡大を受けて、20年2月以降、この診療報酬の面でも臨時的な対応が繰り返されていた。

 最初に診療報酬の臨時対応が発表されたのが、20年2月14日。「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」という事務連絡で、COVID-19の患者を受け入れる場合は、入院患者の人数や医療スタッフの人員配置について、柔軟な対応を認めることが周知された。

 だが、感染が拡大し、さらなる病床の確保が必要になるなか、重症や中等症のCOVID-19の患者に対する診療報酬を通常の2~5倍に引き上げるなど、思い切った加算も行われるようになった。

 この事務連絡は感染拡大とともに改定され、最新の21年9月28日付のものでは「その63」まで版が重ねられている。

 診療報酬上の臨時措置は、当初はCOVID-19の患者を診療している医療機関を評価するために加算が行われていた。だが、当然のことながら、コロナ禍においても、がんの治療を受けていたり、生活習慣関連病などで定期的に通院が必要な患者もいたりするため、医療機関は感染対策を施しながら診療を続けている。長引くコロナ禍を受けて、直接、COVID-19の患者の診療を行っていない医療機関にも、感染対策のための経費として、診療報酬の加算が付けられるようになっていった。