4月以降は全ての診療報酬に一律加算
この特別措置は9月いっぱいで終了に

 まず、20年12月5日から、6歳未満の乳幼児の診療について、小児特有の感染予防策を講じて外来診療を行った場合は、全ての医療機関で、初診・再診のいずれでも、1回につき100点(1000円)が加算されることになった。大人と比べて、乳幼児の診療では、医療スタッフが患者と濃厚接触する機会が多く、感染予防策の徹底が必要という理由からだ。

 加算、というと患者側の自己負担が増えるイメージだが、乳幼児に関しては実際はそうではない。本来、6歳未満の自己負担割合は2割だが、乳幼児の医療費については、ほとんどの自治体が医療費助成を行っている。無料、または1回当たり500円程度の定額負担で受診できるので、COVID-19の感染予防加算が継続されても、自己負担にほとんど影響は出ていない。

 乳幼児の外来加算の期間は21年9月末までで、10月以降は加算額の規模を半額にして、22年3月まで継続する予定で導入された。

 さらに、21年4月1日からはこれがさらに拡大された。6歳以上の人についても、一律の加算が付くことになったのだ。感染対策を十分に行った上で外来を行う場合は、初診・再診いずれも1回につき5点(50円)、入院は1日につき10点(100円)が加算できるようになったのだ。

 COVID-19の特徴の一つとして、感染していても無症状の人がいることが挙げられる。別のケガや病気の治療で来院した患者が、実はCOVID-19に感染していたということもある。誰もがウイルスを保有している可能性があることを考慮して、医療機関では、全ての患者に対して、医療スタッフが防護具を着用して対応したり、施設内の消毒を徹底したりするなどの感染対策が必要になる。

 通常診療を行う上でも感染対策は必要との判断から、その経費を手当てするために、COVID-19の患者以外の診療にも、診療報酬上の加算が付けられることになったのだ。

 そのため、21年4~9月の間に、外来診療を受けた人は、COVID-19の感染や疑いの有無にかかわらず、漏れなくこの加算が付いていたのだ。1回当たり50円の加算なので、70歳未満で3割負担の人の場合、負担増は10円程度なので、気がついていた人の方が少ないだろう。とはいえ、この間一般の人の懐からも、わずかながらもコロナの感染予防対策費が支払われていたことになる。

 この一律の加算については、導入当初から21年9月末までと期間が区切られていた。10月以降は原則的に延長しないことを前提に、感染状況や地域医療の実態を踏まえて、場合によっては延長する道も残されていた。

 だが、感染が爆発的に拡大した第5波のさなか、東京や大阪などの都市部では、本来なら入院治療が必要な中等以上のコロナ患者の受け入れ先が見つからない事態が続出した。

 その結果、診療報酬で加算を取っているにもかかわらず、コロナ診療に消極的な医療機関に対して世間の厳しい目が注がれることになった。日本医師会などの医療者団体は、10月以降も一律加算の延長を求めていたが、その要求は通らず、当初の予定通り、9月末で終了することになった。