カナダのトロントでマーケティングの仕事をしているライアン・ウィーバーさん(41)は先月、昨年3月以降初めてオフィスに戻った際、自分のデスク上のあるものに目がとまった。思わず二度見したと言う。「初めは松ぼっくりかと思った」近づいてよく見ると、それは松ぼっくりではなかった。1年半前に新型コロナウイルスの流行で在宅勤務になった時に持ち帰るのを忘れたりんごだった。「きっと誰かが捨ててくれていると思った」とウィーバーさんは話す。何百万人もの労働者が完全な在宅勤務をなお続ける一方、オフィスに戻り始めた人たちはまるで奇妙なポンペイ遺跡に迷い込んだようだと口をそろえる。壁に掛けられたカレンダーは2020年のまま。パソコンを立ち上げると、数週間は在宅を余儀なくされる可能性のある新たなコロナウイルスに関する記事がブラウザーにはそのまま残っている。自動販売機やデスクの引き出しのお菓子の賞味期限もかなり過ぎている――まだ食べられるかもしれないが。