前回、女性がセカンドキャリアを構築するに当たって男性にはない「7つの壁」があると書いた。前回に紹介した3つ、「人的ネットワークの弱さ」「やりがい喪失感」「女性さらにシニアという二重苦」は、言ってみれば「ワークキャリア上の壁」である。一方、残りの4つは「ライフキャリア上の壁」だ。ビジネスの現場で求められるスキルは男性と同じでも、ライフキャリアにおいては、女性には男性とは異なるスキルが求められる。(Next Story代表 西村美奈子)
定年を意識し始めて
「地域で活動したい」と思ったものの…
女性はコミュニケーション能力が一般的に男性よりも高いといわれる。だから、定年後、地域活動に参加するのも男性よりも容易だという。だが本当にそうだろうか?
大手IT企業でエンジニアとして働いてきた北山香奈子さん(58歳、仮名)は、半年前の苦い経験を筆者に語ってくれた。
技術部門で部長職を務め、役職離任後、肩書こそ部長だが部下を持たない立場になった。今の会社で65歳まで定年延長して働こうか、迷っている。60歳で定年退職して、地域で何かできないかとも考えているが、地域とは接点がない。子どもが小さい頃は地元の祭りに参加するなど、近所との付き合いも多少はあったけれど、子どもの中学入学に合わせて引っ越した関係で、今はほとんど地域とのつながりがなく、近所の人ともあいさつを交わす程度だ。
「正直言って、これまで地域活動にはほとんど関心がありませんでした」と言う北山さん。毎朝7時過ぎには家を出て、夜は早くても7時に帰宅、週に何度かは9時を過ぎ、深夜の帰宅が続く日もあった。週末に出勤することも多かったし、そうでない日は家族と出かけ、近所の人と顔を合わせることもない。
けれど定年を意識し始めた頃、地域でいきいきと活躍するシニアの話を聞いて、「私も!」との思いが芽生えた。ちょうどそのとき、地域の催しで手伝い募集の案内を目にし、軽い気持ちで参加した。