デジタル庁の発足、出口調査の徹底
法の整備で大半のトラブルは対応可能

 1番目の問題は、そもそもこの10月にデジタル庁が発足した理由そのものです。これから5年以内に行政サービスでマイナンバーカードを便利に使えるように世の中の仕組みを一気呵成(かせい)に変えるというのがデジタル庁の存在意義なので、この記事ではそこは克服されることを前提に考えましょう。

 2番目の問題ですが、システム障害が起きたら困ることはこの世の中には無数にあります。それでもデジタル社会では、銀行も鉄道の運行も病院のカルテもデジタル放送もすべてシステムは障害を克服しながら稼働を続けています。

 メガバンクのシステム障害が起きる現代ですから、国政選挙がネット投票になれば何らかの障害が起きる状況もいつか発生するでしょう。ですから、「そうなったときにどうするのか?」のルールを決めておくことが大切です。最悪の場合、投票のやり直しを含めて、法改正をどうするのか、確かに検討項目は多いと思います。しかし、ネット投票が議論されはじめた2000年代とは違い、現在の情報通信インフラを前提にすればシステムの問題は解決可能な問題になっているはずです。

 ひとつ飛んで、4番目の問題は本質的に重大です。システムインフラに携わっていらっしゃる方はよくご存じのように、インフラに対するサイバー攻撃は日常的に発生しています。もし某国が我が国の選挙システムに侵入して巧妙に選挙結果を書き換えたとしたら? それはどう防ぐことができるのでしょうか?

 比較的起こりうるサイバー攻撃として有権者のパソコンやスマホをウイルス感染させて投票自体をゆがめられたことが選挙後にわかったとしたら? ないしは、その感染自体に誰も気づかなかったとしたら?

 この問題は五番目の問題と表裏の関係にあります。みんながAという候補者に投票したと思っているのに、結果としてBという候補者が圧勝したとします。紙の選挙であれば再開票を請求することができますが、ネット投票ならそれがありません。

 理由もわからないとします。某国のウイルスが個人の投票をゆがめたのか、秘密裏に集計プログラムをB候補に書き換えたのか、それとも選挙集計プログラム自体に政府の陰謀があって、特定の候補の得票を上積みする秘密のコードが挿入されていたのか?

 そのような疑惑が無限に起こりうることを考えると、第三者による出口調査的なシステムが抑止力として、政府が運営するネット選挙システムとは別に存在すべきかもしれません。たとえば、NHKや大新聞からの「誰に投票しましたか?」という質問に有権者は積極的に回答するのがひとつの自衛策になります。もちろん、うそを言う人は一定数いるでしょうけれども、統計学的には大量のサンプルがあれば独自調査結果は実際の結果とかなりの確率で一致します。

 ですから、どの調査を見てもA候補が当選しているのに、実際の選挙ではB候補が当選したとしたら、その選挙結果は「怪しい」と考えることができるわけです。

 この問題の解決としては「ではどうするのか?」について、どのような法律を作るかが重要です。サイバー的な要素での不正が疑われるケースについて、プログラムのコードを検証したり、ウイルスの有無をチェックするよりも、実用的には「結果が疑わしいケースでは何らかの機関が再選挙を命じることができる」ようにするのが現実的かもしれません。