テクノロジー・ドリブンのものは広がる可能性がある

谷口 古いスタイルはある程度は残るかもしれないですけど、もう今はアメリカを中心とするスタンダードはそうじゃなくなってますから、そこに合わせるしかない。先日もシリコンバレーの「500スタートアップス」というVCとやりとりをしていたんですが、向こうがなんで動きが速いかというと、四半期ごととか早く結果を出さなきゃいけない。

そうするとテクノロジー・ドリブンのものは広がる可能性がある。他が持っていないテクノロジーがあるとインターネットによって一気に爆発する可能性があるわけです。イスラエルのテクノロジーがアメリカでけっこうマーケットを持っているのはそういう理由なんです。例えばビッグデータの解析なんかは、最終的に数学のレベルの高さがあれば文化の違いに関係なく広がっていく。

加藤 サムライさんは、従来の日本企業のイメージとは違うという点を印象づけられましたか?

安藤 結局、うちのファンドの状態を見てもらえば、ポートフォリオとか出資先の数とか、イスラエルにもないようなインキュベータだということがわかるんで。そこを見ると向こうの人も「あ、すごいね」と。日本にも新しい世代のVC、起業家が輩出していると認識してもらえたと思います。

イスラエルの人たちからは、日本は文化が違うし知り合いもいないし、どう出て行っていいかわからない、日本から来てくれたことで取っ掛かりができたと言われました。初回の訪問の目的としては関係性づくりですが、イスラテックさんのおかげで非常に良い関係性ができ、今も問い合わせがどんどん入っています。

加藤 日本でも大きい企業の人はけっこう行ってるんですけど、スタートアップが行ったのはおそらく今回が初めてでしょう。

安藤 イスラエルのスタートアップにとって人口15倍の日本市場は魅力です。日本に誰か信用できる人がいれば出ていきたい、としきりと言われました。

谷口 日本にはユダヤ人があまり住んでいませんものね。北米やヨーロッパにはいっぱいいるから、そのネットワークで進出しやすいけど。

安藤 それと、日本企業に来てくれよ、ということも言われましたね。サムソンのR&Dセンターはあるのに、日本の大企業のは一つもないのが不思議でした。

谷口 日本の大手企業も関連会社などを通じて個別で行ってはいるんですけどね。例えば最初にソフトバンクからiPhoneが出たとき、そのテレビチューナーのバッテリのチップはイスラエル製だったんですよ。ただ、今回のように日本からVCとして、スタートアップの集まりとして行くのはあまりなかったことでしょうね。