脱炭素地獄#番外編・TSMCPhoto:JIJI/ソニーグループ提供

半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾TSMCの日本進出で、日の丸半導体にビッグチャンスが訪れる――。東京大学の黒田忠広教授は、自動車産業を中心とする日本企業の“次世代半導体”の開発が加速することに期待を寄せる。特集『脱炭素地獄』(全19回)の番外編では、黒田教授に、TSMCの誘致がもたらす日本企業への波及効果について聞いた。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

TSMCの日本進出を後押しした
東京大学との共同研究協定

 台湾TSMCが表明した日本進出――。この背景には、東京大学と結んだ協力関係がある。2019年11月、東大はTSMCと最先端の半導体技術の共同研究に向けた協定を締結し、これを機会に日本政府によるTSMCの誘致交渉は大きく前進した。

 東大の黒田忠広教授はTSMCと日本企業の“パイプ役”として知られている。20年8月には学内に「先端システム技術研究組合(RaaS、ラース)」を設立。パナソニック、日立製作所、ミライズテクノロジーズ(デンソーとトヨタ自動車の合弁会社)など日本企業が参加して、TSMCの最先端プロセスを使う半導体の設計手法を開発中だ。

 また黒田教授は、半導体の次世代技術である「後工程の三次元(3D)実装技術」の第一人者でもある。3D実装技術についてTSMCは22年初頭にも、茨城県つくば市で日本企業と共同研究を始める見通しになっている。

 黒田教授は、TSMCの誘致がもたらす日本企業のビジネスチャンスをどう描いているのか。

――日本政府のTSMC誘致は、19年11月の東大・TSMC提携以来、1年以上の交渉で結実しました。政府の狙いはどんなところにあったとみていますか。

 半導体のサプライチェーンの強靱化を考えている政府から見て、日本の半導体産業の構造は大問題です。