脱炭素地獄#18Photo:123RF

米中欧が電気自動車(EV)シフトにかじを切ったことから、車載電池欠乏危機が懸念されている。主要国による電池投資競争が熾烈さを極める中、日本陣営の官民の足並みはそろわない。日本の自動車メーカー、電池メーカーは半導体払底の教訓を生かすことができるのか。特集『脱炭素地獄』の#18では、電池争奪戦の内幕を追う。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

バイデン米政権の急速なEVシフトに
反応したビッグ3とトヨタ

 またしても大きな賭けに打って出た。

 10月18日、トヨタ自動車は車載電池の米国生産に約34億ドル(約3800億円)を2030年までに投下することを決めた。トヨタは日本と中国における電池投資も加速させており(合弁形態含む)、今回の決断で日米中の三極生産体制が整うことになる。

 工場建設の意思決定としては異例の速さであり、検討には1年もかからなかった。日本で電池工場を共同運営するパナソニックとは組まず、単独で決断したのが“スピード投資”につながった。

 今年に入って、米国の電気自動車(EV)シフトが急加速した。米バイデン政権は、3月に総額1740億ドル(約19兆円)のEV支援策を打ち出した。続く8月には、30年までに米国の新車販売の50%を電気自動車(EV)などの電動車へシフトする方針を示した。

 もはや米国のEVシフトは後戻りしない――。その方向性が明確になると、米自動車大手のビッグ3の動きも加速した。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)は米国内に韓LGと合弁で電池2工場を建設中だが、6月に合弁2工場の建設計画を新たに付け加えた。米フォードは9月、韓SKグループと米国内に電池工場を建設する計画を公表、25年に稼働させる。

 トヨタとほぼ同じタイミングで投資計画を発表したのが、米クライスラーを傘下に持つ欧州ステランティスだ。韓LGと韓サムスンSDIと2つの工場計画をほぼ同時に発表し、工場は24〜25年に稼働させる見通しだ。

 中国、欧州に続き米国でも車載電池の投資競争が始まった。世界のEVシフトにより電池争奪戦が勃発したのだ。現在、脱炭素とデジタル化の波が押し寄せたことで、世界的に半導体不足が深刻化している。同様の払底危機が車載電池でも起こるということだ。

 果たして、日本の自動車メーカーや電池メーカーは、世界の電池争奪戦で勝ち残ることができるのだろうか。水面下の動きを解説していこう。