脱炭素地獄#17Photo:123RF

製鉄や自動車など環境負荷の高い企業が、血眼になって「脱炭素」に取り組んでいる。電気自動車の開発といった王道の技術革新だけではなく、太陽光発電の導入からペーパーレス化の推進に至るまで、実に涙ぐましい努力を重ねているのだ。特集『脱炭素地獄』(全19回)の#17では、主要業種の統合報告書から、その取り組みの“勘所”を読み解く。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

ホンダの「脱エンジン車」宣言
脱炭素強制シフトに企業はあの手この手

 ホンダが“脱エンジン車”の方針をぶち上げた。電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)のグローバルの販売比率を、2040年までに100%にするという構想だ。

 自動車メーカーの温室効果ガス(GHG)排出量は、自社の製造工程での排出量よりもユーザーが自動車を使用しているときの排出量の方がはるかに多い。

 20年度におけるホンダのサプライチェーン全体のGHG排出量は2億5448万t-CO2e。そのうち、「製品(ホンダ車など)の使用」による排出量は2億221万t-CO2eに上っている。

 日本では再生可能エネルギーの普及が限定的だ。そのためホンダがEVシフトを進めても、EV使用時に必要な電気が化石燃料エネルギーで生み出されている限り、抜本的な脱炭素は進まない。

 それでも、ホンダは自動車業界では先駆けて意欲的な目標を提示した。そのアプローチの難易度は極めて高いが、日本政府が50年のカーボンニュートラルを実現するというゴールを示した以上、異例の踏み込んだ方針を掲げざるを得なかったということだろう。

 このように、脱炭素シフトを迫られている日本企業は、自社の特性に応じてさまざまな脱炭素戦術を繰り出している。EV開発といった技術革新や太陽光発電の導入など、いわば“王道”の施策だけではなく、製品の包装材の省略からオフィスのペーパーレス化に至るまで、実に涙ぐましい努力を行っているのだ。

 その取り組みの“勘所”を各社の統合報告書やサステナビリティレポートなどの開示資料からひもといていこう。

 ホンダ、ヤマトホールディングス、三菱ケミカルホールディングス、ソニーグループ、日本製鉄、ANAホールディングス、大成建設、ENEOSホールディングス、味の素、AGCなど主要企業10社の脱炭素“アプローチ”に迫る。