ネチネチ上司が「おーい全員聞け!」
大人こそを目を見張るリアルな描写

 まずゲームの世界観が壮大である。銀河系宇宙の果てに地球に似た惑星があって、そこには悪が存在しない。しかし、その惑星とふたご星であるはずの“アース”では、さまざまな悪が一部の人を苦しめているという。特に、「社会の礎であるはずの“労働環境”が何者かに脅かされているというのだ」とある。そこでそれを取り締まりRJ(労働条件)を向上させるべく、その果てなる惑星から“アース”へと、個性豊かな5人のパトロール隊員が送り込まれた。

 ここまでが導入である。キャラのデザインは児童向けマンガのテイストであり、メインターゲット層を考えればこの壮大な設定とデザインには得心がいく。

「貧乏で普段は寝てばかりいるがいざとなると熱いおじさん凄腕弁護士」などが主人公では、似合うのはおそらく劇画調であり、児童の心はおよそつかめない。また“労働条件”を“RJ”としていて、怪しげな業界用語のようになっているが、この無理くりさも「1人でも多くの少年少女がとっつきやすくなるように」という思いの表れであり、好感が持てる。

 さて、ストーリーは現在11話まであって(今後更新されて増えていく可能性はありそうである)、それぞれトピックが“ハラスメント”や”時間外労働”などに当てられている。

 各エピソードに入ると早速隊員が「NG波が強いな…。あっちからか?」といったことをつぶやく。“NG波”に関する説明は特段設けられていないが、「なにかよくない気配がしているのだな」ということはおそらく児童も読解するはずである。無精ひげのおじさん弁護士が「きな臭えな…」ではやはりダメであろう。

 NG波が強い方に向かうと、上司と社員あるいはシフトワーカーが話し合っている。上司は「シフトはそうかもしれないが、今日は忙しいから残業してくれ。助け合いが社会の常識だろう」などと言ってシフトワーカーを困らせている。

 このやり取りのディテールが、少年少女向けとは思えぬほどリアルでとにかく秀逸である。たとえば“ハラスメント”の章では、「コピー1枚」を間違って30枚取ってしまった新入社員を上司がネチネチなじり、果てに「おーい、全員聞け!今後、コイツにコピー取りの仕事まわすなよー。経費の無駄遣いにしかならんからな!」と言う。「こういう物言いする人、たしかにいる!」と思わされる迫真の描写である。

 少年少女が読む分には「なんて嫌なやつなんだ」くらいの感想であろうが、ある程度社会経験を積んだ青年や大人なら、同種の不当な扱いを受けた体験を持つ人は少なくないはずであり、上司になじられる登場人物が他人には思えず、否応にも気持ちが入ってしまった。