これから労働条件はどこまで改善していくか
政府と現場、双方の努力に期待

 以上が話題アプリ『労働条件(RJ)パトロール!』の概要である。純粋にゲームとして遊ぶには堅苦しさは否めないが、「厚労省リリース」ということでこちらが評価のハードルを下げているからであろうか、よくできているように感じた。上司と部下のやり取りのリアルさ、そして情報の有益さは一見の価値がある。

 日本政府は諸外国に比べると野暮ったい部分があり、各種ムーブメントに対する動きも「率先する」というよりは「追随する」といった形を取ることが多い。これは悪く言えば「遅い」であり、良く言えば「慎重」である。その慎重派がいよいよ労基法の普及と徹底に乗り出したのだから、違反企業の運営は今後さらに取り締まられる流れとなるであろう。

 丸の内にオフィスを構えるある大企業に勤める知人から内情を聞くと、「対外的に“クリーン”であるところを見せたい本部からの要求と、その要求の隙間を縫ってなんとかしようとする現場」といったせめぎ合いがあるらしい。たとえば午後6時以降の残業が禁止されている曜日に、PCを使用するとその使用履歴のデータを受け取った本部から注意が飛んでくるので、午後6時以降はPCを使わずに残業する…といった実態があるそうだ。

 現場からすれば「お上の決定は現場に即していない」ということになろうが、お上からは「現場の判断基準が時代に即していない」となる。この対立意見のすり合わせは双方によって行われるべきだが、実質的にスタッフの生殺与奪を直接握っている現場側がより必死に向き合う必要があると考える。

 なんにせよ不当な理由で搾取が行われたり、心身ともに健康を害されるような労働環境は根絶が目指されるべきであり、『労働条件(RJ)パトロール!』のリリースはその試みの一環として好ましいものであると感じた。