みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#25では、みずほが悪名高き「1兆円増資」を実施した直後にフォーカスする。
当時みずほフィナンシャルグループは正念場を迎えていた。1兆円を超える大増資に打って出たにもかかわらず株価は逆に低迷、市場ではみずほ国有化の懸念が高まり、「第二のりそな」と囁かれる始末だ。そこで五つのキーワードを基に、当時のみずほが直面した財務の深刻度合いを読み解く。
なりふり構わぬ苦境のみずほ
メインバンクでもあっさり支援打ち切り
昨年2002年末、経営再建中の巨大テーマパーク、ハウステンボス(HTB)をめぐって、きな臭い匂いが漂い始めた。地元・九州の有力地銀のあいだで、メインバンクのみずほコーポレート銀行が支援を打ち切るのではないか、という疑心暗鬼が生じてきたのだ。
竹中平蔵金融相が主導した不良債権処理の厳格化方針によって、二度にわたる金融支援後もなお経営不振が続くHTBが処理対象になるという見方がにわかに強まった。
地域経済への影響を勘案して支援継続するという観測もあったが、2月末にみずほコーポレート銀行はHTBをあっさり見放した。1000億円の焦げつきもなんのその。西武百貨店向け1400億円を債権放棄し、ハザマ向け1000億円の損失処理にも踏み切るなど、なりふり構わぬ大型案件処理に手をつけた。
ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)と呼ばれる米国式の貸倒引当金計上手法も導入した結果、不良債権処理損失額は期初見通しの6000億円からじつに3.5倍にまで跳ね上がった。
2003年3月期決算に刻み込まれた「竹中シナリオ」の傷跡。そのシナリオには、りそなを追いつめた実質国有化の道筋も盛り込まれている。はたして、みずほは竹中金融相の筋書きどおりに演じるピエロとなるのか、それとも独自の復活シナリオを描くのか。「決算分析」に基づいて検証しよう。