みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#34では、東日本大震災の直後に起きた2度目の大規模システム障害に焦点を当てる。震災直後という最悪のタイミングで、みずほ銀行のシステムがダウンした。銀行業務の基本で、社会インフラとして果たすべき決済機能の提供すらできなくなったのだ。みずほ銀は約10年前にも同じようなトラブルを起こしており、存在意義すら問われかねない危機に陥った。
震災のさなかにシステム障害
機能不全に陥ったみずほ銀の窮地
みずほ銀行をメインバンクとする、ある中堅企業の経理担当者は切羽詰まった表情を浮かべていた。カネは準備できていたのに、取引先への支払いが滞りそうになっていたからだ。
あわてて他の銀行の営業担当者を呼び、その場で店舗に急ぎの電話をかけてもらう。
「今からうちのお客さんが行くから、口座を開設するための書類を全部作っておいてくれ」。電話を受けた事務担当の女性行員は、すぐさま準備に取りかかった。
ひと息ついたのもつかの間、もう一つ気がかりなことがあった。
「いつ自分の口座からカネが引き落とされ、相手に届くのか」
担当者を問い詰めても、「相手がみずほの口座を使っているので、わからない」の一点張り。企業にとって、死活問題になりかねない事態に、経理担当者の不安は増すばかりだった。
こうした混乱の原因は、2011年3月15日から起きたみずほ銀の大規模なシステムトラブルだ。窓口やATMなどで、振り込みや現金の出し入れなど、多くの機能がマヒ。最大116万件、金額にして約8300億円の未処理取引が発生する事態となった。
東日本大震災の直後で、なおかつ“5・10日(ゴトウ日)”と呼ばれる、給与振り込みが多い日付をまたいだことで、企業、個人共に多大な迷惑をこうむった。
利用者だけではなかった。みずほ銀の手が回らず、振り込み業務の代行を依頼された他行も、対応に追われてきりきり舞いだ。店舗によっては、みずほ銀メインの企業の駆け込み寺となっているところもある。
そんな店舗では、企業間決済に使われる「総合振込」や「給与振込」の口座開設ラッシュ。節電のために定時退社の号令がかかるなか、事務担当者は忙殺されている。
また、「こっちだってシステムの容量に、ものすごい余裕があるわけではない」(他メガバンク関係者)のが実情。尻ぬぐいで共倒れしないよう、他行のシステム担当者たちの緊張感も、かつてないほど高まっている。