みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の最終回では、みずほで何度もガバナンス不全が露呈してきた原因である「旧行意識」の病巣をえぐる。他の2メガバンクではあり得ないほど旧3行による縄張り争いを演じてきたみずほ。三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループにあって、みずほにないものとは?
表面上は平和でも密かに定着
みずほの「旧行別縄張り」
合併とは、いわば戦争だ――。3行統合の交渉に当たったみずほの元取締役がそう喝破したように、旧3行による内部抗争は熾烈を極めた。
確かにみずほといえば、前身である日本興業銀行と富士銀行、第一勧業銀行の旧3行それぞれが覇権を握ろうと火花を散らしているイメージがあるだろう。
事実、統合当初はポストから各行のトップが記者会見で座る位置まで、事あるごとに旧3行が張り合った。
しかし、それが表立って見られることはもはやない。特に2011年、旧行意識の打破を掲げた佐藤康博頭取のワントップ体制に移行してからというもの、正面切った旧3行の争いはまったくといっていいほど聞こえてこなくなった。
とはいえ、旧3行の垣根がなくなり、旧行意識が払拭されたのかといえば、そんなことはない。見えづらくはなっているが、旧3行の呪縛は、今なお消えずに残っている。
みずほになって入行してきた若手世代は別だが、旧行世代には3行統合から10年の時を経る中で、その意識はなくなるどころか、むしろ染みついていった。組織的にも、いつしか部門ごとに旧行の縄張りが定着してしまっているのが実態なのだ。