コロナ禍で社会は大きく変化し、誰もが将来に対して強い不安を抱いている。先の見えない時代を生き抜くために必要なのが「哲学」である。作家の佐藤優氏がさまざまな“不安”に関する質問に答える形で構成される『仕事に悩む君へ はたらく哲学』(マガジンハウス)から、一部抜粋・再編集し、「孤独の哲学」について解説する。
なぜ人は孤独を感じるのか
シマオ:これだけネットも発達した世の中になったのに、なぜ人は孤独を感じてしまうんでしょうか?
佐藤:実際的な観点からいえば、個人レベルではなく、現在、社会の閉塞感があるということが大きな理由だと思います。例えば、日本や韓国は自殺率の高い国だと言われるけど、そもそも自殺する人が多くなるのはなぜだと思いますか?
シマオ:やっぱりお金の悩みとかでしょうか。
佐藤:それもあるでしょうが、実は経済的な悩みは表面的なものにすぎません。その実体は「不安」のような心理的な要素が大きいと考えられています。
シマオ:不安……。なんだか漠然としていますね。
佐藤:「漠然とした不安」は、まさに芥川龍之介が自殺を選んだ理由でした。芥川は友人への手紙に「将来に対するぼんやりした不安」と書いています。
この心理的理由と自殺の関係を最初に見つけたのが、チェコスロバキア共和国の初代大統領だったトマーシュ・ガリッグ・マサリクという人物だったんです。
シマオ:ト、トマト、ガーリック、マサラダ?