「アンティークコインは安いものでは数千円、高いものでは1億円以上と価格帯のレンジが広いので、初心者から上級者まで、幅広い層の投資家が参入しやすいという特徴があります。また、金は今でも地中から掘り出されており、価値が下がるリスクを有していますが、アンティークコインの場合、残存枚数は常に一定のため、価値が下がりにくいというメリットもあります。管理がラクで、種類が多く、価値が比較的安定している。こうした理由から、実物資産としてアンティークコインを保有しようという動きが、世界的なトレンドとなっているのです」

チャイナマネーの流入で
1円銀貨の価格が急騰

 アンティークコインの中で、昨年以降、特に価格が急騰しているのが、明治・大正時代に製造された日本の「1円銀貨」(以下、円銀)だ。1871年から1914年にかけて、対外貿易専用銀貨として発行され、主に台湾や中国で流通していた。

 1887年までの円銀は発行枚数が少なく、元々プレミア価格が付けられることも多かったが、比較的手に入りやすい「並年」と呼ばれる年号の未使用品であれば、昨年までは2万円ほどで購入できたという。

「一昔前まで、コイン収集家の興味は主にヨーロッパのアンティークコインに注がれており、円銀に注目をしていたのは一部のマニアくらい。投資対象としては完全に日陰の存在でした。ところが今年4月頃から急に市場価値が跳ね上がり、現在は並年の銀貨でも6万~8万円で取引されています」

 円銀の価格急騰の背景には、中国の富裕層による“爆買い”が影響しているのではないかと、田中氏は推察する。

「中国は他国に比べて政府の権限が圧倒的に強いため、極端な例ですが、『人民元は明日から使えなくなります』などと急に宣告される可能性もなきにしもあらず。そのため、中国の富裕層には自国の通貨に不信感を持っている人が多く、10年ほど前から、美術品や不動産といった実物資産への投資が増えました。こうした中、アンティークコインに投資する動きも加速しているというわけです」