「交際費の復活」こそが
忘年会絶滅を解決する

 ここまで整理した論点を一言でまとめると、企業は、本当は忘年会をどんどんやりたい立場なのです。そして社内の求心力を高めるための社内の飲み会だけでなく、取引先とのつながりを強めるための社外の接待、これはどちらも会社運営上必要な業務であり、会社から見れば必要な投資でもあります。

 しかし、平成6年に確立した現在の税制では、これらの飲み会を経費でじゃかじゃか落とすことが難しくなっています。業務に必要な経費なのだけれども、税務上は経費で落ちない。私たちは交際費についてはそれが当然だと考えているのですが、歴史を振り返ると実はそれは戦後生まれた比較的新しい概念です。

 戦前は、企業は無制限に交際費を使うことができたのですが、昭和28年にその状態が「濫費(らんぴ、むやみやたらに濫用されている費用のこと)」とみなされました。そんな交際費の抑制のために一部課税が始まったのが、交際費損金不算入のはじまりです。財界からはいろいろと反対論があったのですが、国は段階的に規制強化を行います。

 身内で宴会をしてそれを野放図に経費に計上するなど、もってのほか。それでもバブル直前までは取引先との交際費は前年までの枠内ならOKとされ、それを超えた部分だけが課税されるという具合で制度としては残っていました。

 昭和の時代に銀座のクラブが栄えたのは、主にこの交際費が損金として認められる税制だったことが理由だったのですが、昭和57年に大企業向けの税制が、「交際費は原則、全額損金不算入」という方針に切り替わったことで銀座の凋落(ちょうらく)が始まります。

 法人の極端な濫費と節税をやめて、法人税収を安定させるという観点では、この政策の意義は昭和の時点ではありました。しかし、令和の時代を迎えてこの政策が妥当かどうかという点はあらためて政策議論をする余地があるのではないか、というのが私の問題意識です。