蛋白尿を放っておかない、脳-心-腎臓病やがんの可能性もPhoto:PIXTA

 蛋白尿と聞くと「腎臓の病気」が思い浮かぶが、実は心筋梗塞や脳卒中、おまけにがんリスクも反映している。

 奈良県立医科大学腎臓内科学の研究チームは、特定健診のデータを利用して蛋白尿とがんリスクとの関連を解析。その結果、微量の蛋白尿であっても、がん死リスクが上昇することが示されたのだ。

 調査は、2008~11年に7都道府県で行われた特定健診の受診者37万7202人のデータを利用して行われた。年齢の中央値は64歳で、男性が44%、登録時の蛋白尿は陰性(-)が85.5%、微量蛋白尿(±)が8.5%、軽度蛋白尿(1+)が4.1%、中等度?重度蛋白尿(2+以上)が2.0%だった。

 追跡期間中(中央値3.7年)に3056人ががんで死亡。蛋白尿のレベル別に解析すると陰性を1とした場合、微量蛋白尿のがん死リスクは1.16倍、軽度蛋白尿では1.47倍、中等度~重度蛋白尿では1.61倍へ有意に上昇していた。

 蛋白尿レベルが軽度以上の場合、血液がん、泌尿器がん、消化器がん、婦人科がんのリスクが上昇する一方、微量蛋白尿では血液がんのみで1.59倍と有意にリスクが上昇していた。

 蛋白尿とがんとの関連では、先行研究でも前立腺がん、腎がん、尿管がんなどの泌尿器がん、そして白血病、多発性骨髄腫など血液がんとの関連が示唆されている。

 もともと蛋白尿は、血管の内側の細胞(血管内皮)がボロボロになり、炎症が生じている状態を反映する。こうした環境下では、がんの転移が生じやすいことが知られており、研究者は「微量の蛋白尿は心血管疾患の発症を予測するだけではなく、がん発症の予測因子でもある」としている。

 つまり、健康診断などで蛋白尿を認めた場合は、心血管疾患のリスクになる高血圧症や脂質異常症のケアにとどまらず、がん検診もしっかり受けるべきなのだ。

 2年近く続いた自粛行動は、全身の健康に影響しているだろう。コロナ禍が多少とも落ち着いているうちに、ご無沙汰していた健康診断でチェックしておきたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)