なぜポジティブ思考は「良い決断」をするのに役立たないのかPhoto:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

同じ時間を繰り返す
ループもの映画で重要な「決断」

「ループもの」と呼ばれる映画や小説のジャンルがある。そのほとんどがSFで、主人公が自分の意に反して、突然過去(1日前など短期のことが多い)に戻り(タイムリープ)、現在まで行動すると再び過去に戻る。そして、同じ日や時間を何度も繰り返す、といった設定の物語だ。

 洋画では『バタフライ・エフェクト』『ラン・ローラ・ラン』『恋はデジャ・ブ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などがある。邦画では、何度もリメークされた『時をかける少女』がループものの金字塔だろう。記憶に新しいところでは、テレビドラマ『素敵な選TAXI』がある。

 ループものの多くでは、主人公が最初の1日で何らかの不幸な出来事(バッドエンド)に遭遇し、2度目以降の同じ1日では、その出来事が起きないように考え、行動する。例えば2006年公開のアニメ映画『時をかける少女』では、主人公が最初のうちはタイムリープできることを楽しみ、自分の得になるように使っていた。しかし、友人の事故に遭遇する経験をした彼女は、時を戻し、事故が起こらないよう努力する。

 バッドエンドに至らないためには、ある時点での「決断」を変える必要がある。Aという選択肢を決断したら悪いことが起きた。ならば、今度はBを選んでみよう、というように。だが、そういったトライが、また別の困った事態を招いたりもする。そんな思いがけない因果関係も、ループもの作品の魅力の一つだ。