コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。
そんな中、このコロナ禍に22万部を突破したベストセラーストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。

精神科医が「他人を変えるのは究極のストレスだ」と断言するワケPhoto: Adobe Stock

他人を変えようとするのは「洗脳」

 私の元に寄せられる相談の10件に1件は次のような相談です。

「夫が散らかしてばかりで、片づけをさせたい」
「部下の仕事が遅いので、意識を変えたい」
「子どもがきちんと宿題をするように変えたい」

 つまり、「他人を変えたい」という悩みです。そんなことは可能なのか、ここで説明していきましょう。

 他人の行動や性格を変えるのは、非常に難しいことです。本人が「問題意識」を持たない限り、不可能なことです。

 本人が「変わりたいと思わない」。もしも、本人の意思に反して、性格を変えられるとしたら、それは「洗脳」です。あなたは、部下やパートナーや子どもを洗脳したいのでしょうか

「他人の課題」と「自分の課題」

 覚えておかないといけないのは、「他人と過去は変えられない」ということです。変えられないものを変えようとすると、ものすごいストレスを受けます。1トンの巨大な石を一生懸命動かそうとしても、ただ疲れるだけです。

 それが原因で、精神的に疲れて、うつになる人もいます。でもそれは「自分で自分が疲れる原因を作っている」ようなものです。「他人を変えたい」という人にはアドラーの「課題の分離」という考え方が役に立ちます。

 たとえば、「宿題をする」というのは、誰の課題でしょうか。それは、「子ども自身の課題(他者の課題)」であって、あなたの「自分の課題」ではありません。宿題をしないで怒られ、困るのは「子ども」本人です。

 子どもが宿題をするか、しないかは、自分で判断して、自分で決めることです。あなたが子どもの意識をコントロールすることはできませんから、そこでやきもきしても意味がありません。他者を尊重して見守るしかないのです

 ほとんどの人間関係のトラブルは、「他者の課題」に干渉・侵害することで起こっています。「課題の分離」がきちんとできると、人間関係のストレスは大きく解消できます。

「2つのメッセージ」を意識する

「他者の課題」(その人の課題)に対して、立ち入られたり、過剰に干渉されることを人は嫌います。ですから、「宿題しなさい」と子どもに言うほど、子どもは逆に反抗して宿題をしなかったりします。では、どうすればよいのか。放置するしかないのでしょうか。こんな、いい方法があります。

「Aちゃんが宿題してくれると、お母さんは嬉しいんだけどな」と伝えることです。自分の願望、希望を、ただ相手に伝えるだけです。主語がI(私)なので、「Iメッセージ」と言われます。

 一方、「(あなたは)宿題をしなさい」は、主語がYou(あなた)なので、「Youメッセージ」と言われます。

「Youメッセージ」は、あなたの思いやりからの言葉であっても、相手には命令、指示、指図、お仕着せ、おせっかいとして取られるので、反発、反感を買いやすいのです

「Iメッセージ」は、あなたが勝手に思うだけです。「宿題してくれると、お母さんは嬉しい」というのは、1つの事実なので、「お仕着せがましさ」を感じさせることなく、「宿題をしてほしい」という願望を、マイルドに伝えられます。

 たとえば、「自分で出したものは、自分で片づけてよ」ではなく、「部屋がきれいだと、(私は)気分がいい」と言うのです。

「いつも遅刻ばかりして、どういうつもりだ」ではなく、「いつも時間を守る人は、(私は)信頼できるなぁ」というように伝えます。人を動かしたい場合は、「Youメッセージ」をやめて「Iメッセージ」で伝えることです。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。