最初のあいさつで、プレゼンの成否は大きく変わる。話題の書籍『対話するプレゼン』の著者、岩下宏一は、「聞き手をグッと話に引き込むあいさつがあるんです」と言います。本記事では、プレゼンの場を「一方的に説明する場」から「対話の場」に変えることを提案した『対話するプレゼン』より、本文の一部を抜粋・加筆・再編集してお届けします。

2ステップの「魔法のあいさつ」で相手の心をつかむ
あいさつ1つでも、対話的な空気を作ることができます。
以前、プレゼンのワークショップの最中に「一発でその場を支配できるひとことがあったらぜひ教えてください」と尋ねられたことがあります。
さすがに「一発」「ひとこと」ではなかなか難しいものです。
しかし、その後、現場での実践や指導を繰り返す中で、最初に聞き手との距離をグッと縮めるやり方ならば見つかりました。
この本を手にしたあなたにお教えします。
ポイントは2つです。
まず1つ目は、「こんにちは」のあとにはっきりと間をとり、聞き手からの反応を受けとめ、そのあとに「お返事していただきありがとうございます」と返すということです。
これで、聞き手は「今日の話し手は、自分たちのことを丁寧に受けとめようと考えているんだな」と感じます。
2つ目は、自分の名前をゆっくり丁寧に言うことです。
聞き手にとってはその日初めてあなたの名前を耳にする場合も多く、特に珍しい名前や難しい漢字の場合、1回で正確に理解するのは難しいこともあります。
そのため、姓名をはっきりと発音し、必要であれば漢字の説明を加えると良いでしょう。
これにより、聞き手は「相手の立場に立った話し方もできる人なんだ」と感じるようになります。
①「あらためまして」と言う(これを言うと、みなさん聞く準備をしてくれます)
↓
②「こんにちは/おはようございます/こんばんは」と言う
↓
③聞き手のうなずきやあいさつを受けとめる「間」をしっかりとあける
↓
④「お返事していただきありがとうございます」と礼を言う
↓
⑤「私の名前は『〇〇 〇〇』です。どうぞよろしくお願いします」と名乗る
(この時「〇〇 〇〇」の部分を、他の箇所の半分のスピードでゆっくり発音する)
↓
⑥わかりにくい名前の場合はさらに説明する
例:「あ せ び た ろ う 」と申します。「あせび」は漢字三文字、ウシウマのウマ、酒に酔うの「酔う」、樹木のモク。「ウマ・ヨイ・キ」と書いて「あ せ び」と読みます。
この手順を1つずつ丁寧に踏むことで、聞き手は話し手に対して肯定的な印象を持ち、プレゼンのスタートがスムーズになります。
単純な2ステップですが、緊張などをしているとなかなか、この2つが難しいものです。
逆にこれさえできれば、不思議なことにプレゼンの場が一気に、対話の場に変わりますよ。