半導体のエネルギー効率向上が鍵になる?

 そのように考えると、たとえばアップルシリコンが目指すワット当たりのパフォーマンス向上も、単に筐体の発熱を抑えた快適な環境で高い性能を享受するためのものではない、ということが理解できる(参考:M1搭載Macが続々!アップルが自社開発チップに注力する理由)。アップルのポリシーに照らせば、半導体レベルのエネルギー効率を改善することによって、地球環境への影響を最小限に抑えていくための取り組みの一環なのだといえる。

アップルと他社の半導体を比較したグラフ。上はCPU、下はGPUで、それぞれ縦軸がパフォーマンス、横軸が使用電力(ワット)。赤い曲線がM1、青い曲線がM1 Pro/M1 Max Photo: Kazutoshi Ohtaniアップルと他社の半導体を比較したグラフ(上がCPU、下がGPU)。それぞれ縦軸がパフォーマンス、横軸が使用電力(ワット)。赤い曲線がM1、青い曲線がM1 Pro/M1 Max Photo:Apple

 同社は、現時点ではiMacの上位機種やMac Proのアップルシリコン化を果たしていないが、2022年の前半にはそれを完了するだろう(筆者が考えていたよりも時間がかかったのは、過去のCPU移行時のような外部調達の半導体ではなく、自社開発であることも関係したようだ)。Mac Proや一時期存在したiMac ProのCPUは、Intel Xeonというサーバークラスのものだが、今後登場してくるMシリーズのSoCも、それに匹敵するパフォーマンスを低消費電力で発揮できる設計になるはずだ。

 そこで一つ想定されるシナリオは、サーバークラスのMチップが完成した時点で、アップルは、かつて販売していたXserveのような専用エンクロージャーのサーバー専用機をリリースして、自社のみならず他のIT企業や一般企業のサーバーの置き換えを図っていくのではないかということである。「カーボンニュートラルのためのサーバー」という切り口は、日本で思う以上に世界の企業にアピールするはずであり、ティム・クックがそのような好機を逃すとは考えにくい。