二強対立構造がないと、多様性は生かせない
先に述べた「うちの外国人は日本人以上に日本人だ」問題ですが、これはその外国人が育った環境以外にも要因があります。それは、対立構造がない環境では、少数派が生き残れないというものです。
移民により国家ができあがった米国には、先住民以外にも多数の民族が住んでいたり、東海岸や西海外に少数の超富裕層がいる一方で多数の貧民層がいたりします。多様性に富む人々が共存できる環境を実現しているのが二強対立構造の存在で、一番分かりやすいものが共和党と民主党による対立です。
分かりやすさのために敢えて国籍、年齢と性別で表現しますが、日本人中年男性が中心の組織に、海外で育ち外国企業で働いてきた日本語を話せない20代の外国人女性が1人入社したと想像してください。その女性は組織における自分の居場所を見つけるために、日本語だけでなく、日本人中年男性の特性を一生懸命学習して適応しようとするのではないでしょうか。
多様性がただのマイノリティと認識され、マジョリティと共存することなく、挙句多数派に飲み込まれる事態に陥ってしまっては、何の意味もありません。
二強対立構造を作り、少数派が生き残ってしっかりと自己主張ができる環境を整えることが重要です。
今回は、多様性を高めるために外国人を採用しても変化が起きない理由について解説しました。まとめると、①解決したい課題が明確になっていない、②外国人や女性を採用することを一概に多様化と捉えている、③二強対立構造を作れていない、の3点になります。
次回は、どのようにして組織の多様性を高めれば変化を生み出せるのかについて考えてみましょう。
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。
坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、