ニューノーマルの時代にはこれまでの勝ちパターンは通用しない。変革期に必要な新しい思考回路が求められている。それがアーキテクト思考だ。アーキテクト思考とは「新しい世界をゼロベースで構想できる力」のこと。『具体⇔抽象トレーニング』著者の細谷功氏と、経営共創基盤(IGPI)共同経営者の坂田幸樹氏の2人が書き下ろした『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法』が、9月29日にダイヤモンド社から発売された。混迷の時代を生きるために必要な新しいビジネスの思考力とは何か。それをどう磨き、どう身に付けたらいいのか。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けする。好評のバックナンバーこちらからどうぞ。

アーキテクト思考でDXを成功に導くため、一社員にもできることとは?Photo: Adobe Stock

 前回は、デジタル革命により、業界や組織という枠組みがなくなりつつあることについて解説しました。

 今回はその流れの中で、「会社のDXを進めるために、一社員がどのように振る舞うべきか」について考えてみましょう。

会社の中の一つの駒ではなく、
棋士の視点で見て、改革を進めるべき

 産業革命までの世界のビジネスは、ほとんど個人や零細企業によるものでした。

 それが産業革命による機械化の進展や生産手段の共有化によって大量生産の時代が始まり、必然的に大型の工場ができました。そこへの大量の資本投入が必要になることで、生産設備や資本の集中化と大きな組織で働く大量の労働者が生まれました。

 この時代は、巨大なピラミッド型の組織が中心となり、特定の少数の雇い主のために多くの人が働くという(「鶏口牛後(けいこうぎゅうご)」ならぬ)「牛後鶏口(ぎゅうごけいこう)」の時代でした。業界という枠組みができ、業界内の企業ごとのポジションが決まり、企業ごとの仕事のやり方も確立していきました。

 牛後鶏口の時代には組織内での自身の役割を正確に理解し、効率よく業務を進めることで評価されました。将棋に例えると、歩兵には歩兵の役割があり、王将には王将の役割がありました。

 しかし、詳しくは後述しますが、デジタル化の進展によって訪れた鶏口牛後の時代には、例え新入社員であっても、歩兵ではなく指している棋士の立場で思考することが求められます。

 質問者はどのようにDXを進めるべきか悩んでいますが、まずは、「自分は一社員にすぎない」という狭い視点で考えることを止めてみることをお勧めします。