一般解を導入しても、組織に固有な課題は解決できない

 20代の社会人や学生と話していると、「MBAで学んだ内容は、すぐに役に立ちますか」と聞かれることが多々あります。また、「高校で学んだ物理学の法則や頑張って覚えた歴史の年号は、社会に出たら使えない」という批判を口にする人もいます。

「競合が最新ERPソフトを導入したから、うちも導入しよう。」「俺の若いころには手書きの手紙を送って新規顧客を獲得していた。今の新人は、何度言ってもこれをやらない。」

 皆さんの属している組織では、こうした声を耳にすることはありませんか?

 これらは全て非アーキテクト思考による、川下の具体的な発想です。第2回で解説したように、アーキテクト思考では具体的な法則や解決策を当てはめて問題解決をするのではなく、ゼロベースで解決策を考えます。

 昨今、多くの会社で多様性を高めるために外国人や女性の採用を増やしています。多様化した組織を構築すること自体は、多様化した社会に対応するための一般解の一つではありますが、自社に固有の課題を解決するうえでそれが本当に有効かは、きちんと検証する必要があります。自社の置かれている状況に鑑みた場合、若い女性だけの組織の方が適しているかも知れません。

 また、多様化した組織ほど平均点が下がる危険性を伴うことにも留意すべきです。あらかじめゴールが決まっているゲームをする場合、その戦いを熟知している既存メンバーが阿吽の呼吸で戦った方が平均点は高まります。流行りに流され、右に倣えの戦術・戦力を投入すれば試合に勝てる、という訳では決してありません。

 繰り返しになりますが、それぞれの組織にはそれぞれの置かれた環境があり、教科書に載っている一般解ではなく、その組織に合った固有解を考える必要があります。

 まずは自社が抱える課題をしっかりと分析することが重要です。ノウハウ本に載っている、すぐに役に立ちそうな具体的な手法ほど適用範囲が狭く、すぐに役に立たなくなることは、覚えておいてください。