世論調査によると自民党が第一党になりそうだという。3年前に政権から追われたことや原発事故を招いたことに、安倍晋三自民党総裁は「重く受け止め、反省している」と言う。だが政権公約には「安全神話」や「電力支配」を真摯に反省した様子は見られない。それどころか民主党の自滅をこれ幸いと、国防軍創設など「右路線」に舵を切っている。
総選挙は小党が乱立した場合、小選挙区の欠点である死票が増える。民意は分散し、固い地盤に支えられた自民党が有利な情勢だ。民主党を懲らしめるつもりの一票が、日本の右旋回についても同意を与える一票になりかねない構図である。
自民党が進めた原発推進の
反省が反映されていない
前回の総選挙と今回の状況の違いは、3.11後に深刻な原発事故に見舞われたことだ。まず各党の原発政策を見てみよう。
「脱原発、卒原発、脱原発依存など表現が違う程度で、各党の政策に際だった違いは見えませんね」などというテレビのコメンターターは、表層しかみていない。選挙公約をしっかり読めば、原発への取り組みに大きな違いがある。
自民党は原発を争点にしたくないそぶりだ。一時は「脱原発依存」と言っていた。エネルギーを原発に依存しすぎていた政策を修正する、という意味だった。ところがその「脱原発依存」という言葉も公約から消えた。
自民党の政策パンフレットには、「遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立」とある。カタカナ言葉で煙に巻くような表現だが、平たく言えば、発電に占める原子力の割合をどれだけにするか10年かけて検討する、ということである。
電源構成の最適化(ベストミックス)は、今でも経済産業省の総合エネルギー調査会がやっている。電力需要や原油市況、技術動向など踏まえ5年ごとに大枠を決める。原子力、化石燃料、自然エネルギーの依存比率を考える、行政にとっては当たり前の仕事だ。