12政党が乱立し、異例の多党選挙となっている今回の衆議院議員選挙。政党の分裂、合流が繰り返されるなか、どの党や誰に投票すればよいか、いつも以上に迷っている有権者も少なくないはずだ。原発問題、社会保障問題、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加の是非など、様々な争点に対する各政党の政策、マニフェストの内容、違いなどが曖昧でわかりづらいなか、有権者は一体どのような選挙行動をとることになるか。
そして現在、「一票の格差」が最大2.4倍という「違憲状態」にあり、死票も多いと指摘される現在の衆議院選挙制度、小選挙区比例代表並立制。この選挙制度をどう修正すれば、より有権者の意志が伝わる民主主義体制になるか。有権者の投票行動の行方、選挙の争点、あるべき選挙制度改革について、慶応義塾大学・小林良彰客員教授に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子 インタビュー日/12月2日)
民主党政権は「自民党への懲罰」から誕生
政権崩壊を招いた政治家の“誤解”とは
――2009年夏の総選挙では自民党が大敗し、政権交代が実現しました。一体なぜ3年3ヵ月前、有権者は民主党を選び、投票したのでしょうか。
1954年東京都生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。ミシガン大学、プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校、ケンブリッジ大学ダウニング校などで研究教育に従事。慶応義塾大学法学部教授を経て、現在、日本学術会議副会長ならびに慶応義塾大学と横浜国立大学で政治学及び公共政策論を担当。最新著に『政権交代―民主党政権とは何であったのか』(中公新書)がある
もちろん民主党の個々の政策に期待する人もいたと思うが、多くの人はそれまでの麻生内閣に失望し、自民党に変わりうる政権として政策はともかく民主党に投票した。2009年衆院選の際、選挙前調査ではさほど高くなかった民主党の政策への期待が選挙の調査では急に高まったことからもわかる。選挙に勝って政権交代したのだから、何か変えてくれとして民主党への期待感が強まり、鳩山政権の支持率70%につながったのである。
具体的には、2009年の選挙前調査では、民主党の子ども手当については「評価する44%」vs「評価しない52%」、高速道路無料化についても「評価する30%」vs「評価しない65%」であった。もちろん、自民党の政策に対する評価も低く、消費税引き上げについては、「評価する44%」vs「評価しない51%」、所得100万円引き上げについては「評価する27%」vs「評価しない67%」と、どちらの政党の政策についても評価は低かった。
したがって、政策の内容はともかく、今の政権が良くないからダメ元でも良いので一度、民主党に変えてみようという「ダメ元政権交代」であった。言い換えると、前回の衆院選は民主党の政策に期待したというよりも、とにかく自民党に投票したくないという、自民党への「懲罰投票」の色彩が強かった。