また、中国民政部が今年発表した統計では、中国の昨年の結婚件数は814万件と2019年と比べて113万件減少し、過去17年間で最低の水準となった。男女の人口比を見ると男性が3700万人多く、独身の20~40歳男性は1752万人に上る。

 そうした中で、高齢化が急速に進んでいる。今年5月に中国政府が発表した10年ごとに実施される「第7回国勢調査」では、65歳以上の人口は10年前と比べて6割増えて1.9億人となり、全体に占める割合は13.5%だった。中国の退職年齢はおよそ50〜60歳。来年の2022年以降は、1960年代の2回のベビーブームで生まれた人たちが続々と定年を迎える予定だ。今後10~15年の間に、定年退職の大波がやってくる。その数は2.3億人に上ると予測されているという。

 これら一連の数値からは、人口増加の減速や少子高齢化の加速など中国社会に大きな変化が生じていることが分かる。中国の人口問題の専門家は、こうした変化が社会保障制度の危機をもたらす恐れがあると指摘している。

高齢者は「一人っ子」の親世代
政府が行った発表には反発の声も

 少子高齢化、低い出生率や結婚率、非婚化、男女比の不均衡、社会の格差、階級の固定化……といったさまざまな社会現象が中国の社会保障や経済に大きな影響を与えている。

 そんな中、11月24日、政府が行った「ある発表」が物議を醸している。それは、中国国務院が発表した「新時代の高齢者事業の取り組み強化に関する意見」(以下「意見」)というものだ。

 特定の高齢者関連の政府部門ではなく、国務院が高齢者事業に直々に指導する対応計画を出すのは、実に21年ぶりのことだ。それだけ、中国社会の高齢化が深刻な状況に置かれており、この状況をいよいよ看過できないということなのだろう。

「意見」は高齢社会としての目標や政策作り、高齢者健康維持のための社会体制とシステムの構築、高齢者の社会参加、介護人材の育成など、詳細かつ広範囲で高齢社会全般への対応計画を示している。

 この内容は高齢者事業に関わる関係者だけではなく、一般市民にも大きく注目された。

 特に、「意見」にあった下記の一節が人々の心に刺さったようで、国民からは反発の声も相次いだ。

 その一節とは、「成人した子どもは親の近くに住むか、一緒に共同生活することを奨励し、親を扶養する義務を履行し、世話の責任を負うように」という部分である。

「結局、親の老後はわれわれ一人っ子が面倒を見るのかよ! 国は80年代に言ったことを忘れたのか?」

 国が80年代に言ったこと――。かつて、一人っ子政策が実施された頃、国は国民に「只生一個好、政府来養老(子どもは一人で良い、政府が老後を見る)」と呼び掛けていたのだ。長年、このスローガンが世間に深く浸透していた。