薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰#番外編Photo:JIJI

薬学部が新設ラッシュだ。厚労省が一部の「質」の低さに警鐘を鳴らすものの新設に歯止めがかからない。医学部の名門・順天堂大学も薬学部に参入し、生き残りをかけた戦いは激化しそうだ。一方で、定員削減に追い込まれる大学も出始めた。特集『薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰』の番外編では、新設ラッシュと二極化が進む薬学部の実態に迫った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

乱立する薬学部の「質に課題」
6年制が始まり定員は1.4倍に

「学生の質の維持に課題がある大学が存在する」――。将来薬剤師が過剰になるとの予測をまとめた厚生労働省の有識者会議「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」は、大学の薬学部に警鐘を鳴らした。

 検討会は冒頭のように指摘した上で、今後、人口減少により「薬学部に進学する学生の数が減る」と明記した。

 こうした状況を踏まえ、「入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模の在り方や仕組みなどを早急に検討し、対応策を実行すべきである」と検討会は提言した。

 要するに、駄目な薬学部は“淘汰すべきだ”と踏み込んだのだ。

 薬学部の定員は増加を続け、薬学部6年制が始まる前の2002年度の薬学部の定員は8200人だったが、20年度は1万1602人と、約1.4倍にまで増加した。薬学部の乱立による一部の“質の低下”は、国も見過ごせないものとなっている。

 それでも足元では有識者会議の指摘を“無視”するかのように、大学が薬学部を新設する動きは止まらない。

 次ページ以降では、医学部の名門・順天堂も参入し、加熱する薬学部の新設ラッシュと、その裏で幕を開けた“淘汰”の実態について明らかにする。