「日本におけるデリバリーサービスの第1の変革は、1985年のドミノ・ピザの日本上陸です。それまでも、そばやすしといった出前の文化はありましたが、メニューは『もりそば』『かつ丼』など、聞けば誰もが想像のつくものばかり。配達の予定時間を平気で過ぎるのも日常茶飯事で、“出前=遅い”という感覚が一般的でした」

 そんな状況で登場したドミノ・ピザは、メニューの写真を載せたチラシの配布や、“30分で運べる”という配達のスピーディーさで注目されたという。このときから、ピザに限らず、各チェーン店のデリバリー展開が普及していくこととなった。

「第2の変革は、2016年のウーバーイーツの参入に当たります。それ以前は、デリバリーサービスを行うには、店が自前で配達員を雇うしか方法がありませんでした。ウーバーイーツが、配達を別の業者が代行するスタイルを日本にもたらし、それまでイートインのみで運営していた店舗のデリバリーも可能になりました」

 ユーザー側からしても、頼める店や料理の幅がぐっと広がったことに衝撃を受けた人も多いはずだ。実際、この時期から、家で調理しづらい揚げ物や、地域で有名な老舗店などのメニューが人気となったそうだ。

 ちなみに、今ではウーバーイーツと肩を並べている出前館は、2000年からサービスを開始しているものの、本腰を入れて販促を強化したのは2017年頃から。ウーバーイーツは、確実に日本のフードデリバリー業界に風穴を開けたと言えるだろう。

 そして、緊急事態宣言で外食の機会が激減した今回のコロナ禍もまた、市場の成長に拍車をかけた。

 フードデリバリーの利用者数の推移を見ると、2度目の緊急事態宣言発令中だった2021年3月の利用者数は、2020年3月の約3倍に(1)。市場規模についても、2019年度には1700億円だったが、2022年度には3300億円まで拡大するという予測が出ている(2)。

(1)…出典:株式会社ヴァリューズ
(2)…出典:株式会社日本能率協会総合研究所

「コロナ以前の業界の伸び率も決して悪くはありませんでしたが、やはりコロナ禍で一気に市場規模が拡大しました。デリバリーは特別な日に頼むものではなく、普段の食事に取り入れる“身近なもの”という感覚の人が増えたと思います」