プロローグ――どうして私が営業で成功したのか?

 完全歩合の営業に飛び込んだ私の前に置かれたのは、大量の電話リストでした。
「ここから順番にかければいいから。トレーニングで教えてもらったでしょ?そのときのトークマニュアルを見ながらやればいいからね。一日100本くらいかけるつもりよ」
 先輩はにこっと笑って、ぞっとするようなことを当たり前のように言いました。

「これにかけるのか……」
 とまどう私。本当は知らない人に電話をかけるなんてすごく嫌。

 自分だって食事中だったり、トイレに行こうとしているときに電話が鳴って出たら何かのセールスだったときは、すごく、むかつく。ましてや好きな人からの電話を待ってる人にかけてしまって「なんだ、彼かと思ったのにセールスだった……」とがっかりさせてしまったら……。そんなふうに相手の状況を考えてしまう私は、いっこうに受話器を取り上げることができないでいました。

 ただただ、電話をかけることが怖かったのです。
 隣では同じころに入社した新人の田中さんが、もう受話器をとってかけ始めていました。

 初日、とうとう私は電話をたった一本もかけることができず、商品の教材をひたすら見て勉強して時間をつぶしました。アポイントがとれなければ、契約がとれなければ給料がないというのに……。

 そんな私を見て「この子はもう明日から来ないかもしれないな」と思ったと、先輩は三ヵ月後、私に言いました。

 そんな私が今では電話営業のみならず、すべての営業活動において指導する立場になりました。
 きっと「どうして?」って思うでしょう?

 それは初めて契約をとったとき、お客さんになってくれた人から言われた一言が始まりでした。

続きは明日……
(次回更新は12月11日予定です。)


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