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なぜ、今やNYは「起業家にフレンドリーな街」なのか? ニューヨークに根ざしたスタートアップ・アクセラレーター、ERAのディレクターに聞く

岡本彰彦 [Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]
【第3回】 2012年12月11日
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岡本 たしかにニューヨークは都市として魅力的だが、そのことがシリコンバレーとニューヨークのスタートアップにどのような違いをもたらしているんだろう?

MA いい質問だ。ニューヨークではビジネスモデル、特にどのように儲けるか?により注目する傾向があると思う。カリフォルニアではそうでもない。哲学が違うんだ。ニューヨークでは、ビジネスモデルがなければ、投資を得ることはできない。けれどもシリコンバレーでは、インスタグラム*3やツイッターのように……。
*2 Instgramは、ソーシャルネットワークを通じて写真を共有するサービス。会員数3000万人を超えてフェイスブックに800億円で買収された。売り上げがほぼ0円のサービスに800億円の価値がついたことで話題となった。

岡本 アイデアが面白くて、ビッグピクチャーがあれば……。

MA そうだね。特にそれらを実現するテクノロジーだね。インスタグラムは何の儲けもなくても、10億ドルで(フェイスブックに)売れた。その一方、ニューヨークの投資家はより財務志向で、金融のバックグラウンドをもっているから、彼らはどのように会社がカネを儲けるのか、投資する前に知りたがる。fab.com*4やDigi Groupが起業したときのように。
*4 fab.comは、デザインに特化したAmazonのようなECサイトで、着実に売り上げを上げている。

 未だ儲けがなく例外なのは、フォースクエアーだけだ。ニューヨークでの起業は爆発的に増え、驚くべき場所になっている。

岡本 それにはブルームバーグ市長の貢献も大きいと聞いているが?

MA 間違いないよ。ブルームバーグ市長の政策のおかげでニューヨーク市は現在、“スーパーに”起業家にフレンドリーな存在で、さまざまな素晴らしいことを始めている。ニューヨーク市は(グローバル・ビジネス・リーダーを目指して)チーフ・デジタル・オフィサーという役職をつくって起業家を応援している。起業家がウォールストリート界隈に引っ越すなら、フリーレント(家賃全額補助)などのサービスがあるし、ほかにもたくさんの支援プログラムがある。

 誰もが知っているように、ブルームバーグ市長は単なる政治家ではなく、とても成功した起業家だ。だから彼は起業についてどんな問題があるかもわかっている。彼にはゼロから会社をつくりあげ、何十億ドルにもした経験があるからこそできることなんだ。

日本に足りない買収実績
大企業よ! もっとスタートアップを買収せよ

岡本 あなたは、日本のスタートアップのことはどう思っているのか。日本ではブルームバーグ市長のしているようなサポートもシリコンバレーのようなエコシステムもない。日本のスタートアップに足りないものは何か?

MA 僕は日本には住んだこともあるし、毎年日本に行くが、2年前、東京の新宿でプレゼンイベントを行ったとき、僕はそれと同じ質問を集まった50人から60人の人々にしたんだ。彼らはみんな大企業に勤めて、よい給料をもらい、よい仕事があって、賢い。彼らは起業できるんだよ。

 僕は日本のスタートアップは「前例」を必要としていると思うんだ。成功事例をね。僕が成功した賢い人々に「会社を始めたいか?」と聞くと、彼らは「家族がいるからリスクはとれない」と言う。でももし彼らがいくつかの成功事例を見ていて、十分なサポートがあったら……。

岡本 起業することができるかもしれない。

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岡本彰彦
[Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]

株式会社リクルートの投資会社であるリクルートストラテジックパートナーズの代表取締役として、コーポレートベンチャーキャピタルファンドを活用し、日本のみならず、北米、東南アジアをはじめとしたグローバルな投資·事業開発活動を推進する。現職就任以前は、銀行、ベンチャーキャピタル、証券会社などでストラクチャード·ファイナンスや新事業開発に従事した後、2007年にリクルートに入社し、主に同社住宅カンパニーにおける事業開発の責任者とブランドマネジャーを担当。

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