バッテリー生産に2兆円投資
業績回復のさなかで不安も

 さて、今回の長期ビジョンについて、もう少し中身を見ていこう。

 まず、「今後5年間で約2兆円を電動化に投資する」という施策は、今の日産にとって莫大な投資となる。併せて駆動用バッテリー生産体制の増強について「グローバルでさまざまなパートナーと協力して130GWh(平均50kWhの電気自動車に対して約260万台相当)のバッテリー生産能力を確保」(内田社長)するという計画を発表したが、これだけの量のバッテリーの生産量を確保するのは並大抵のことではない。だが、自動車各社がバッテリーの生産体制の構築に走っており、日産としてもここで後れを取るわけにはいかない。

 また、「30年度までに電気自動車15車種を含む23車種の新型電動車を投入する」との発表とともに、今回、新たに3種類のEVコンセプトカーも発表している。

 日産は、初代リーフの投入の際にEV先駆者としてゴーン元会長が「EVの世界リーダーになる」と豪語したが、時代が早過ぎたのか販売が伸び悩んできた。そうした中、EV専業のテスラがあっという間に世界EVトップの座を確保し、さらにここへ来て中国メーカーや欧州メーカーが上位を占めている。

 日産はすでに受注が始まっている新型EV「アリア」に続き、22年央に三菱自との共同開発の新型軽EVの投入を計画している。さらにリーフのパワートレインを応用したシリーズハイブリッドであるe-POWER搭載車のラインアップを拡大して電動化戦略を急ぐことで、車種競争においても巻き返しを狙う。その一端を担う今回のコンセプトカーなだけに、今後の進捗にも関心が集まる。

 さらに、今回の発表で最も注目されたのが「全固体電池搭載車を28年度までに市場投入する」という点だ。