習近平が本気で中国を「民主主義国家」に仕立て上げようとする理由Photo:Kevin Frayer/gettyimages

強固に敷かれる「対中包囲網」
中国が繰り出した“反撃”とは

 2021年も間もなく過ぎ去ろうという師走のこの頃、習近平総書記(以下敬称略)率いる中国共産党指導部、そしてそこに仕える公僕たちは、眠れない日々を過ごしているに違いない。北京冬季五輪まで2カ月を切ったが、重層的に張られた対中包囲網は、崩れるどころかますます強固になっているように見受けられる。

 先週末、英国リバプールで開催されたG7外相会合に出席した林芳正外相によれば、会合では冒頭から中国が議題になったという。中国の国内外における抑圧的、強硬的な行動への警戒心はかつてないほど高まっているといっていい。

 また、同会合に先んじて、米国が主催した「民主主義サミット」を、中国共産党指導部は極度に警戒し、反発してきた。

 北京冬季五輪、および来秋に予定される第20回党大会を控える中、「対中価値観包囲網」が重層的に形成され、中国が国際的に孤立、経済的にも下振れ圧力を受けるような局面に陥れば、それこそ習近平政権の権力基盤、中国共産党の正統性にヒビが入りかねない。

 習近平への権力一極集中、個人崇拝、強権政治に不満を持つ「潜在的反対勢力」は党内外でごまんといる。現状それが可視化されていないだけだ。仮に習近平の人権などの分野における強硬的政策が原因で、欧米をはじめとする国際社会との関係が悪化し、北京冬季五輪が集団的ボイコットに見舞われるような事態に陥れば、党の核心である習近平に責任問題に発展する可能性も否定できない。

 そんな中、党指導部は、米国発の対中価値観包囲網を前に指をくわえて見ているのではなく、打ち崩すべく反撃に出ている。

 典型的な動向が、12月に入り国務院新聞弁公室が発表した『中国の民主』白書(約2万1000字、英語名は「China: Democracy That Works」)、および、それとほぼ同時に、外交部が『米国の民主状況』(約1万4000字、英語名は「The State of Democracy in the United States」)と題して発表した声明文である。