坂東眞理子氏が語る「就活は品格ある大人になるための通過儀礼」坂東眞理子(ばんどう・まりこ)/1946年富山県生まれ。東京大学卒業。69年総務省入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事等を経て、98年総領事(オートストラリア・ブリスベン)。2001年内閣府初代男女共同参画局長、07年昭和女子大学学長。現在、学校法人昭和女子大学理事長・総長

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2022」の「親必読!就活戦線のいまとこれから」を転載したものです。

社会人の先輩として息子・娘の就職活動にアドバイスしたい親世代。だが自分たちの就活時代とは社会環境が違い、Z世代と呼ばれる子どものキャリア観や未来に向けた視線も、かつてとはまるで異なる。親自身はそうしたギャップを自覚し、既存の価値観をアップデートし、わが子の就活を応援しなくてはならない。コロナ禍が続く中、どのような意識を持って仕事観を育めばよいのか。時代の先をゆく識者に「未来を生き抜く」知見を語ってもらった。ベストセラー『女性の品格』などの著書で知られる、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子氏が語る、「ネクストwithコロナの生き方・働き方」とは。(取材・文/ライター 上條昌史、撮影/加藤昌人)

20年後の未来はわからない
就活の“質”を高めるためにできること

 坂東眞理子氏が理事長・総長を務める昭和女子大学は、最近就職率が高いことで知られるが、近年は就職率を競うより、就職の“質”を大切に考えるようになっているという。

「かつては、誰もが知っている一部上場企業に入社することが就職の“質”が良いと考えられてきました。でもそれは、もはや正解ではありません。いくら伝統と歴史がある大企業でも、20年後、30年後にどうなっているかは分からない。

 社会の階層にも変化が出ています。例えば今、1年間の授業料が250万円もするインターナショナルスクールに子どもを通わせているのは、上場企業のエリートサラリーマンではなく、ベンチャー企業の創業者や外資系のエキスパート(幹部社員)の方々が多い。そうした新富裕層が出現し、社会は大きく変わろうとしています。

 とはいえ、就職前に今ある企業の20年後、30年後の業績を見極めろ、といっても無理な話です。これから社会に出ていく学生たちに求められるのは、在学中に語学力や必要な資格を身に付け、自らを成長させてくれる企業を選ぶ、という姿勢です。入社して会社に面倒を見てもらうのではなく、自ら成長し続けることができる環境のある企業を選ぶ。

 もうひとつ大切なのは、企業の経営者の理念を確かめること。目先の金儲けではなく、社会的な課題に取り組もうとする志を持っているかどうか。学生たちには、そうしたことを判断した上で、“質”の高い就職をしてもらいたいと考えています」