子どもが親の意見と違う
進路を選んだとき

 親の意見とは違う進路を子どもが選んだとき、親はどう対応すればよいのだろうか。

「例えば、芸術系で自分の好きなことを仕事にしたいという子どもは多いですよね。映画をつくりたい、ミュージシャンになりたい、など。そんなときは、頭ごなしに否定せず、インターンシップなどでその世界が垣間見てくることを勧めればいいと思います。少しでも現場を経験すれば、その世界がいかに厳しいか、いかに才能のある人たちがひしめいているかが分かります。

 子どもの好きなことをやらせたいと考える親は多いものです。もしかしたら才能があるかもしれない、と親も甘い夢をみがちです。けれどもそれは、ベンチャーで成功する以上に難しいことです。それでも子どもがやりたいと言うならば、やらせるしかありません。大切なのは、子ども自身が、自分で自分の才能を自覚し、覚悟することです」

 今は入社3年目で3割が転職するといわれている時代、転職に対してはどのようなアドバイスをすべきなのか。

「これからの時代は、転職はある程度当たり前になってきます。そのときのアドバイスとしては、“攻めの転職”をすべきだということ。この仕事はつまらない、この上司は理解がない、給料が安い、だからもっといいところへ、というのは“逃げの転職”です。そうではなく、こういう仕事をやってみたい、こういう経験を積みたい、という目標を持って“攻めの転職”をしてほしい。

 親の世代は、就職した会社で我慢して働くうちに力が付き、次第に責任のある仕事ができるようになって、収入も上がっていきました。長いキャリアの中で、自分がワクワクするような仕事に出合えるのは、2、3割あれば上出来だ、という世界で育ってきました。ですが、そんなふうに“お説教”しても、今の若者たちは聞く耳を持ちません。

 ならば、子どもが転職しようか迷っていたら、今の仕事の何が悪いのか、と考えさせるべきです。言われたことをやっているだけの、受け身の仕事をしていないか、自問自答してみること。“逃げの転職”をさせないためには、そんなアドバイスが有効でしょう」

 親によっては、子どもを自分と同じ職業につかせようとするケースもある。会社のオーナーや医者、弁護士など、子どもに後を継いでほしいと思っている親もいるかもしれない。

「親としては、自分の経験を伝えることができるし、もし子どもが職業を継いでくれるならば、それは子どもから評価され、尊敬されることになるので、うれしいことでしょう。ただしその場合も、良いことばかりではなく、リアルな苦労も伝えたほうがいいですね。