日本社会は、あまり子どもに自立を迫らないという感じがします。特に母親は男の子に甘い傾向があり、家のことはしなくてもいいなどと言います。ですが、就職しても一人暮らしを経験しないでいると、そのままなんでも面倒を見てくれる女性と結婚して、いつまでも“生活の自立”をせずに、人生を過ごすことになってしまいます。女性にとっても同じこと、男性に寄り添うだけでは、男性の重荷になってしまうだけです。
就職を機に、一緒に住む住まないにかかわらず、母親は子どもに“卒母”宣言をする必要があるかもしれません。必要なときは手伝うけれども、基本は自分でやりなさいと毅然とした態度を取る。父親の役目は妻のパートナーとして、しっかりと夫婦関係を充実させることです。親はいつまでも子どもの生活を支えることはできません。子どもは自分の欲しいものを自分で手に入れる力を身に付けていくこと。就職は“子離れ”のよい機会です」
就職活動は厳しさがつきもので、面接に落ち続けて心が折れる学生もいる。だが坂東氏は、たとえ厳しくても、就職活動はその人の品格を磨いてくれるという。
「学生たちを見ていて思うのですが、就活で苦労した子は人間的に成長します。夏休みが過ぎて“面接で全敗です”という学生もいるのですが、そんな学生ほど相当に鍛えられます。これまで学生という身分で、家でも学校でも大切にされて、あまり自分の限界を感じることが少なかったと思いますが、就活は社会と接する最初の機会ですから、自分の限界に突き当たって悩むことも出てくる。でもそれは、当然のことなのです。
就職に関しては、女性のほうがまだ厳しいという現実があります。私が見ている中でも、実力があっても、第一志望に行かれない学生が多いです。その分、いったん入社すると女性のほうがたくましい。企業の人事担当者からよく聞くのは、女子社員のほうがしっかりしているということ。就職のときの鍛えられ方が違うのでしょう。
就活は、品格ある大人に
なるための通過儀礼なのです
一方で最近の学生、これも女子学生に多いのですが、就活に当たって、ワークライフバランスを気にする傾向が強まっています。私は、女性は働くことが当たり前だと考えていますが、まだ恋人もいない前からワークライフバランスを気にする必要はないと思っています。
もちろん、結婚して子どもが生まれても仕事を続けられる環境は大事ですが、仕事に対してどれだけ一生懸命打ち込められるか。まずは、そこを就活の基準にしてほしいですね。
いずれにしても、品格は人間関係の中で磨かれるもの。就活は厳しいかもしれませんが、自立するための第一歩であり、品格のある大人になるための必須の通過儀礼なのです」