国会議事堂日本が最も真剣に考えなくてはならないのは、戦後、完全に欠落させてきた科学技術安保政策、産業技術安保政策の策定だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

岸田新政権で動き始めた
経済安保推進法や半導体支援

 岸田文雄政権は、経済安全保障問題を戦後初めて内閣の主要政策議題に載せた。

 経済安全保障担当大臣を置き、「経済安全保障推進法」の来年の国会提出を目指すほか、半導体産業支援の基金を創設、世界最大手の台湾メーカーの工場誘致で補助金を出すなどの具体的な取り組みを始めている。

 とはいえ経済安全保障は、非常に幅広い概念であり、何が問題なのか焦点が絞り切れず、言葉が独り歩きしている感も強い。

 筆者は安倍政権の終盤、国家安全保障局次長として政府部内の議論に参加し下地作りをしたが、世界が本気で取り組むこの問題に日本は遅れてはならない。

習近平体制下、「軍民融合」で
科学技術覇権狙う中国

 経済安全保障問題が急速に浮上したのは、台頭する中国が「中国製造2025」を掲げ、共産党独裁体制下で「軍民融合(軍産複合体)」を強力に推し進め、米国の科学技術覇権を脅かし始めたからだ。

 中国は、自由主義的国際秩序から最大の恩恵を受けて急速に経済成長したにもかかわらず、現在、習近平主席の指導の下で急旋回して独裁色を強め、米国に対抗してアジアに独自の勢力圏を主張し始めている。