11月19日、「経済安全保障法制準備室」の看板を掲げる首相の岸田文雄(右から2人目)と経済安全保障担当相の小林鷹之(左) 11月19日、「経済安全保障法制準備室」の看板を掲げる首相の岸田文雄(右から2人目)と経済安全保障担当相の小林鷹之(左) Photo:JIJI

「二階派の一人は小林議員でお願いします」。今年10月、首相の岸田文雄は新内閣の組閣に当たって自民党の二階派幹部の林幹雄に、まだ当選3回(その後4回)の小林鷹之の入閣を要請した。いわゆる「一本釣り」だった。しかも小林の担当は岸田内閣で創設された経済安全保障担当相。岸田の思いが小林の人事に凝縮されていた。岸田が小林に白羽の矢を立てたのは、まだ日本では耳慣れなかった経済安全保障分野の政策ではトップグループの一員だったからだ。

 経済安保の重要性が認識され始めた最大の要因は中国の台頭にある。中国のGDPは2020年で約1550兆円。日本の約3倍に達し、日本の貿易相手国としては第1位。多くの日本企業が中国国内に展開したサプライチェーンに依存する。もはや中国なくして日本経済は成り立たない。

 その一方で日本の安全保障は日米同盟に依存する。安倍晋三内閣で安保法制の制定を官房副長官補として支えた兼原信克は、著書『安全保障戦略』(日本経済新聞出版)の中で喝破している。

「日本の繁栄は、日米同盟という温室の中で咲いた大輪の花に過ぎないという自覚がなかった」