総選挙の実施が決まり、最大野党であり、世論調査的に優勢が伝えられている自由民主党の安倍晋三総裁の金融政策をめぐる発言に注目が集まっている。

 安倍氏は、2%以上のインフレ目標を定めて、これが達成されるまで強力な金融緩和を継続すべきだと述べている。彼の発言を受けて、ドル円相場は80円を超えて円安方向に、株価も上昇に転じて日経平均で9000円を回復するなど、市場は反応を示している。

 2月に日銀が従来のインフレ目標なしの状態から、1%のインフレ目標を提示したときにも、為替の円安と、それに反応した株高があった。今回の反応も含めて、資本市場の反応を見る限り、インフレ目標や金融政策の方針を提示することのアナウンスメント効果は存在している。

 安倍氏が主張する金融緩和政策に対しては、批判も少なくない。

 一つには、ほぼゼロ金利の下で、日銀が市中銀行に資金を供給しても、日銀当座預金に預金準備として必要な金額以上の残高(通称「ブタ積み」)が積み上がるだけで、マネーサプライが効果的に増えないという批判がある。

 この批判は、半分もっともで、半分的はずれだ。

 確かに、銀行に資金を供給しても銀行貸し出しが増えないと、経済に対する効果は乏しい。早急に効果を上げるためには、日銀による株式やREIT(不動産投資信託)などのリスク資産の購入、円安を目指す介入や外債の購入、財政支出による需要の追加といった補完的な政策が必要だ。これらの政策は、日銀のバランスシートのリスクを通じて政府の損益に影響を与えたり、追加的な財政支出を伴ったりする点で財政政策の側面を持つが、副作用がデフレ解消のメリットよりも小さな政策があれば、それをやればいい。

 財政政策の領域に踏み込まなくても、インフレ目標の値を引き上げることにも一定の効果があるはずだ。仮に「1%」という目標と「2%」という目標を、「この水準になるまで、短期金利のほぼゼロが維持される」と解するなら、後者の目標が提示されているほうが、より長い期間安心にほぼゼロの短期金利での資金調達を期待できるから、民間の資金需要を増やすことができる。