ピカソはこう言い返した。「私はここまで来るのに、生涯を費やしているのです」

 コピーライターに「たった一行でもらいすぎ!」という人がいる。その人は、「たった一行」の背景に、コピーライターが費やしてきた膨大な積み上げの存在を忘れてしまっている。

 ピカソが生涯で残した絵画や彫刻などの作品は15万点。正岡子規が36歳で他界するまでの16年間で詠んだ俳句の数は23647句。エジソンが書き残したアイデアノートは実に3500冊である。歴史的に名を残してきた偉人たちの背後にも、気の遠くなるような積み上げがある。ピカソが短時間で描き上げた絵に堂々と高値をつけたのは、圧倒的な積み上げが圧倒的な自信になっていたからだ。

◇辛いことからは適当に逃げる

 57歳で初期の胃ガンが見つかったおヒョイさんこと藤村俊二。手術後に主治医から禁煙命令を下される。そこで愛煙家のおヒョイさんが取った行動とは何か。

 答えは「タバコをやめて葉巻を吸い始めた」である。

 これなら医者に「タバコは吸ってません」と言ってもウソにはならない。おヒョイさんは「規則を真面目に守りすぎない」ことが長生きのコツだと著書で語っている。禁煙の苦しみからもユーモアでヒョイと華麗に逃げる。そんな生き方に、辛いことからは適当に逃げてもいいのだと教えられる。

◆一流の人のトラブル対処法
◇クレーム予備軍と友達になる

 ある経営コンサルタントがオフィス用の不動産物件を探していた。手頃な物件を見つけたのだが、不動産会社によると階下のエステサロンが音に対して非常に敏感だという。悩んだものの条件の良い物件だったため、その経営コンサルタントは入居を決めてしまう。はたしてその後に取った行動とは何か。

 答えは「そのエステサロンの常連客になった」である。オフィスとして使うとはいえ、まったく音を出さないのはやはり難しい。それならば、エステサロンの常連客になって音に関するクレームをもらわないようにしようと先手を打ったのだ。

 普段から周囲の人間と良好な関係を築いているのといないのとでは、失敗してしまったときの相手の許容度に差が出る。クレーム予備軍とは事前に仲良くなっておこう。