がんを治療しながら就労する人にとって朗報といえる制度改定が、この1月から開始された。健康保険の傷病手当金の給付の充実である。断続的に何度も会社を休んでも、所得保障が受けられる内容に制度が改定されたのだ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第234回では、制度の歴史を振り返りつつ、今回の改定の中身を詳しく見ていこう。(フリーライター 早川幸子)
健康保険法制定から100年
傷病手当金の通算化で「治療と仕事の両立」を支援
2022年の元日は、明るい制度改正から始まった。この1月1日から、会社員の健康保険の傷病手当金の給付が充実されることになったからだ。
これまで、会社員の傷病手当金の支給期間は、支給開始日から1年6カ月たつと打ち切られていたが、通算で1年6カ月分支給されるように見直されたのだ。
これは、治療と仕事の両立を目指し、制度改正の働きかけを行ってきたがん患者たちの悲願の見直しでもあった。
傷病手当金は会社員のための健康保険の給付の一つで、被保険者(加入者)が、病気やケガをして仕事を休んで、勤務先から給与を払ってもらえなかったり、減額されたりした場合の所得保障だ。
支給内容には、(1)1日当たりの支給額、(2)支給要件、(3)支給期間――の三つのポイントがある。まずは、それぞれの内容を確認してみよう。
●断続的に複数回休業するがんなどの患者に恩恵がある、「通算」方式への変更