メーカー(製造業)には自動車、電機、食品……などさまざまな業種がありますが、いずれも「商品をつくって顧客に届ける」という点は共通です。では、商品の開発に用いる「アクティビティマップ」とはどのようなものなのでしょうか? メーカーを目指す人ならぜひ知っておきたい基本について、書籍『全図解メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ』から紹介していきます。
本連載でも述べた商品開発の4ステージ(1.チャンスの定義、2.コンセプト設計、3.ディテール構築、4.商品改良)の中では、さらに細かな複数のアクティビティが行われます。これらの流れを整理し、開発チーム内で共有するツールがアクティビティマップです。
このマップは、開発チームメンバーの役割分担を決めることや、スケジュールを組むことなどに使われます。開発チームにはさまざまなスキルを持ったメンバーがいるため、それをどう組み合わせたら、チームとして最もパフォーマンスを高められるかを考えます。
アクティビティマップはノードと矢印で描かれますが、ノードは状態を表し、矢印は活動を表します。また、2方向の矢印は、相互に影響し合う関係を表現します。
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具体例として示した図4-3は、コンビニエンスストアを販売チャネルとする食品メーカーが、ビジネスパーソンをターゲット顧客とした商品開発を行う場合のアクティビティのマップです。これは商品開発の前半部、チャンスの定義からコンセプト設計までをスコープとした、比較的粗いものです。
まずはターゲット顧客であるビジネスパーソンの嗜好を、例えばビジネス街にあるコンビニエンスストアの販売データを分析することによって推測します。最近、どんな商品が売れているか、どの時間帯に売れているのかなど、さまざまな切り口で分析します。このほか、インタビューなどで、さらにその購買行動の背景を調査することもあります。これらを踏まえ、開発する商品のカテゴリーや価格帯などをイメージしていきます。
より具体的な商品コンセプト(容量や味、顧客にとってのベネフィットなど)を設計するために、一部の顧客により詳細なインタビューを行ったり、ウェブなどでターゲット顧客の心理や行動の変化を調べたり、人気のある競合メーカーの分析(どんなコンセプトのものが、いくらで売られているかなど)をします。これらは並行して行われ、かつそれぞれの結果が互いのアクティビティに影響し合います。
例えばウェブ調査によって、「最近は若いビジネスパーソンの間でプチギフトを贈り合うのが流行っている」といった情報をつかんだ場合、それをさらに詳しく調べるためにインタビューを実施する、といった関係です。この結果を受け、調査すべき競合商品も変わるかもしれません。そしてこういったさまざまな調査、分析結果を総括し、開発する商品の具体的なコンセプトを決めていきます。
アクティビティマップは、こうした商品開発の流れを図にしたものであり、開発メンバーが全体像を把握しやすくなります。役割分担やスケジュールもこれに沿って考えることができるため、スムーズに開発プロセスを進めることができるようになります。これは商品開発のプロセスが長い、つまり、多くのアクティビティが必要な業界で特に有効です。
しかし、必ずしもアクティビティマップが必要というわけではありません。初めて開発するカテゴリー、そのメーカーにとって重要な商品の開発など、丁寧に進めるべき案件で主に使うことになるでしょう。
アクティビティマップを使うべきとき
アクティビティマップが特に効力を発揮するのが、アクティビティ間の相互影響が想定される場合です。うまく協働して進めなければ、ムダな業務をしたり後戻りをしたりする羽目に陥り、大きく効率を落とすことになります。
商品開発はスピーディに進められるほど価値があります。アクティビティマップ自体が正解を導くわけではありませんが、開発スピードを速くすることができ、それはメーカーの競争力を高めることになるのです。